昨春の大阪大会決勝戦で |
一方、正門付近をひとりで掃除する主将のM君の姿があった。「おう、何してるねん?」と聞くと「掃除っす。」と答えた。「そんなん、見たらわかるわい。」というと、へへへと微笑んだ。「さては、抽選を前に善行を積もうなどとしてるな。」「当たりです。」と、またへへへとバツの悪そうな微笑みが返ってきた。カントの『善意志』を講義してやろうかと思ったが、真剣に掃除しているのでやめた。主将としても必死の思いなのだろう。去年の夏みたいにR高校や、春の大阪T高校とあたると大変だ。いくら公立の雄の本校野球部でも、最初から甲子園常連校に当たるのは避けたい。結局、主将の『善行』がきいたのか、なかなかいいクジを引いたらしい。
我がクラスにも3人の野球部員がいる。投手組に2人、野手組に1人。毎日頑張っているが、普通科の野球部員は、ベンチに入ることさえ難しい。体育科の生徒がほとんどだ。今年の3年生は教員志望のY君たった一人だった。彼もレギュラーではなく控え選手である。しかし、普通科も体育科も、毎日その日を目指して汗を流している。引退した3年生のY君とK君は「これから応援の練習なんです。社会科教室で下級生を集めてやります。」「これも大事な仕事ですから。」「とにかく3年間やめないで頑張ったことが財産です。」彼らが、次にユニフォームを着るのは、球場の応援席になるという。
「絶対、見にいくぞ。応援するお前らを応援に行く。」と思わず言ってしまった。そう、レギュラーだけでなく、応援に回った3年生、それについていく下級生、全ての部員の私はファンの一人なのだ。
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