2012年7月22日日曜日

「伊藤博文」が忌避された理由

だいぶ前のことになるが、新聞に「世界を歩いて考えよう!」という本の広告が出ていて、高校生にも読めそうな本だったので、タイトルだけで、本校図書館に取りよせてもらうようにお願いしていた。著者は『ちきりん』という有名なブログを書いている方らしい。少し借りて読んでみた。

前の方に「お金から見える世界」という章があって、さっそく面白いなあと思える箇所を発見した。各国の紙幣の肖像についてである。まあ、偽造防止のためにも、紙幣には髭のある有名人を肖像として使う場合が多いのだが、現在の日本では、福沢諭吉、樋口一葉、野口英世が使われている。そういえば、昔の千円札は伊藤博文だった。岩倉具視とか板垣退助とか政治家が多かった。著者はそれが文化人に変化していることについて、ソウル・オリンピックの開催が大きなターニング・ポイントだったのではないかと書いている。韓国にとって伊藤博文は日本帝国主義の象徴みたいなもんである。韓国の人々が日本に来たり、あるいは日本人が韓国で両替する際、いらぬ波紋を呼ぶ可能性があったのでは?というのだ。…なるほど。たしかに文化人の方が安全パイである。

今はユーロで無味乾燥なデザインになっているが、旧紙幣のヨーロッパでも政治家の肖像はあまり使わなかったらしい。まあ、ナポレオンの肖像を使ったら、フランス国内ではまだしも他国では侵略者の肖像という捉え方をするだろうなあ。ドイツしかりスペインしかり…。長い歴史の中、狭い地域で戦争ばっかりやってたわけで、それよりはあたりさわりのない文化人のほうが良いという知恵らしい。しかし、ドッパーンと政治家を使う国もある。アメリカや中国である。著者は、そんな批判があっても平気な「それなりの強国」なのかなあと結んでいる。…この考察実に面白い。私としてはそれに「政治家を肖像に使おうとも問題にされない経済小国」も付け加えたらと思う。そもそも問題になってもあまり困らない国もあるわけだ。

生徒が読んでもなかなか面白いのではないか。高校の図書館にとって『アタリ』の1冊だと思う。

2 件のコメント:

  1. 私もこの本を読みました。ブログの読者でもあります(^^)v なかなか面白い視点で書かれていて興味深いです。ついつい、私も含めて自分の身の回りのことばかりで発送してしまいがちです。ちょっと違った視点からものを見るための、とっつきやすい本として生徒に紹介してみようかなと思っています。

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  2. 非常勤講師さん、コメントありがとうございます。私も少しブログ覗きました。アフリカ関係のところだけですが。(笑)

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