2021年7月20日火曜日

秘伝 教材研究(地理編)6

マレーシアのカールスバーグ・ビール工場 https://www.jbja.jp/archives/35147
工業にも法則性がある。工業立地である。原料志向型、消費地志向型、労働力志向型、用水志向型、電力志向型、臨海志向型、臨空港志向型などの分類がある。

高校生にとって、工業は農業以上に属性がないことが多い。TV番組などでもあまり取り上げないし、世の中にどんな工業があるのか知らない。当然のことである。地理の教師は、そういう事情も踏まえて、できるだけ平易に教える必要があると私は思う。幸い私は、工業高校に15年もいたので、間接的に様々なことを教えてもらった。機械科の担任だったので、実習工場にもよく出入りして、旋盤や特機も知っている。

さて、原料志向型の工業には様々ある。水産資源がとれる港町や商品作物を生産する農村地域での食品産業などは分かりやすい。セメント工業は、石灰岩の産地が定番。製紙やパルプ工業は森林資源と共にある。鉄鋼業では、鉄鉱石と石炭が必要なので、そのどちらかがあるといい。日本では、鉄鉱石産地では釜石、石炭産地では室蘭など。イギリスのぺニン山脈はこの両方が揃っていて、産業革命時、ミッドランドの工業都市の強力なバックボーンとなった。

消費地志向型は、比較的重量のある工業製品で輸送にかかるコストが影響している。その最たるものはビールや清涼飲料水である。ブルキナファソは工業はほとんど未発達であったが、コカ・コーラ社の工場だけは首都ワガドゥグーの近郊にあったし、マレーシア・クアラルンプールでもビール工場は近郊(特別区であるKLとセランゴール州の境くらいに)位置していた。出版・印刷業も同様で、東京やNYCの主要工業になっている。

労働力志向型には2種ある。高度な技術を持った労働者志向型と安価で豊富な労働力志向型である。前者は、楽器、精密機械、ICT関連などである。浜松とかスイス、サンノゼなどの地名が浮かぶ。後者は、縫製、家電組み立て、輸送機械組み立てなどで、途上国が飛翔する際の工業だともいえる。縫製は、すでに中国からベトナムへ、さらにバングラディシュへと移転を繰り返している。アフリカの優等生モーリシャスも香港との関係で縫製でうまく飛翔した。家電組み立ては、マレーシアの飛翔に役立った。輸送機械組み立ては、さらに高度で、他の部品関連企業の集約が必要である。メキシコなどがその好例であろう。

用水志向型は、水の消費が半端ない工業で、まずは原料志向に近いが醸造業、製紙・パルプ工業、鉄鋼業など。電力志向型は、何と言ってもコストの90%を電気代が占めるアルミニウム工業、そして化学肥料工業なども挙げられる。

臨海志向型は、原料をほぼ輸入に頼っている日本などでは、石油精製、石油化学工業、さらには鉄鋼業が多い。臨空志向型は、製品が高額で小さく、航空貨物を利用することが可能なICチップを生産する電子・エレクトロニクス工業となる。

もちろん、これらはステレオタイプの分類であって、全てにあてはまるわけではないが、こういう法則性を知ることは重要であるし、特に理系の生徒には面白く感ずるはずだ。

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