2021年7月20日火曜日

秘伝 教材研究(地理編)5

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地理という教科は、社会科の中でも法則性の理解が重要な教科である。だからこそ理系の生徒に向いているのかもしれない。ケッペンの気候区分の次に学習するのは、農業である。

気候・地形・土壌・社会的条件(技術や消費地からの距離)などの関係性というか法則性があって、それぞれの地域で適地適作で行われているからだ。

農業は、ビジネスである、というテーゼが実に有効である。教科書やサブノートでは、自給的な農業(遊牧や焼き畑農業など)からやる場合が多いが、今やこれらは例外的であるので、最後に回す方がいいと思う。

私は最初にヨーロッパ中世以来の三圃式農業から話を始める。小麦+飼料作物+牧畜がセットになった有畜農業である。ここで重要な法則がある。ヨーロッパは、Cfb・Cs・Dfなどの気候区である。これは、(イタリアのポー川流域などを除いて)米が作れないことを意味している。米作は、Af・Aw・Cw・Cfaなどの地域で可能である。(Dfの北海道は技術の進歩としか言いようがない。)米と小麦を比べると、カロリーは(最近小麦が上がってきたとはいえ)米の方が高い。つまり、人口支持力が高い。小麦だけではカロリー的に厳しいので、家畜を飼い補うのである。主穀農業と有畜農業の相違は生産する穀物のカロリーに由来する。

この三圃式農業で、土地が豊か故に小麦生産中心なのがフランス、家畜を豚にし、飼料もてんさいや豆にした合理的発展をしたのが、ドイツ。(豚は、牛や羊のような広い牧場を必要としないし、これらの飼料作物は土地を自然に耕す故)Cs気候で、硬質小麦(パスタの由来)と家畜が羊なのがイタリア、氷河地形で土地がやせている故に、小麦をあきらめ、牧草だけを栽培、それで乳牛を使い酪農化したのがデンマークという図式になる。

ここで、家畜の法則を教える。降水量と家畜の関係である。乾燥に強いのは羊やヤギで、豚は屋内で買うので関係なし、牛はどちらかというと雨が好きである。この法則は、後にアルゼンチンのパンパやオーストラリアでの、牛と羊の分布にはっきりと出てくる。

労働生産性と土地生産性の法則も重要である。集約的か粗放的かという技術的・あるいはビジネス上の条件と気候・地形・土壌などを組み合わせて、メタ的に世界の農牧業地を分類していくと実に面白い。地理の面白さは、こういうところにあると思うのである。重ねて言っておきたい。決して暗記教科ではないのだ。

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