2024年10月27日日曜日

磔刑図のあれこれ

https://taesunworld.com/grunewald/
「名画で見る聖書の世界<新約編>」(西岡文彦/講談社)イエスの磔刑図の話、続編である。アッシジの聖フランシスコ以来、磔刑図は『苦悩するキリスト』となり、その中でも無類の迫力を誇るのが、グリューネヴァルトの作品(上記画像)である。肌には、ムチ打ちの傷、さらに茨のトゲが突き刺さっている。イエスの処刑時間は昼間だが、聖書にはイエスの絶命の瞬間、太陽が隠れ大地が闇に包まれたとあるからで背景は闇である。

白い衣で手を合わせているのが聖母。倒れそうな聖母を支えているのが、聖母のことを託された弟子のヨハネ。ひざまずいて祈っているのが、マグラダのマリア。アトリピュートは香油の壺で、足元にある。彼らの反対側に立っているのは、洗礼者・聖ヨハネで、「彼は必ず栄え、私は衰えなくてはならない」と聖書も文字が書かれており、復活を意味している。

https://www.tabitobijutsukan.com/
『フランダースの犬』で、主人公の少年が最後に見たのは、アントワープ聖母大聖堂のリューベンスの「十字架昇架」(画像左)「十字架降架」(画像右)である。画家を目指していた少年の憧れである。

無数にある磔刑図の中で、私の好みを最後に付け加えておきたい。それは、ダリの磔刑図である。

https://blog.goo.ne.jp/shysweeper/e/
dd3ef0e8414a14260032de89b26a84a9
「十字架の聖ヨハネのキリスト」この作品は、上から見るという実に珍しい構図で、しかも釘で手足を打ちつけるといった聖書のの記述を無視している。逆三角形に見える部分は、三位一体の図を表しているという評もある。下部に拡がる光景は、例によってポルトリガトである。この作品は、宗教画ではないような気がする。磔刑をモチーフにした美の追求ではないだろうか。

ダリには、これ以外にも、「超立方体的人体(磔刑)」という作品がある。シュールリアリズムから、原子力へと興味を移した時代の作品で、カトリックと数学と科学、カタルーニャの土着文化をごちゃまぜにした「原子力芸術論」を発表。さらに、スペインの建築家の立方体理論をもとに、妻のサラを聖母のモデルにしたてて、磔刑図を描いたのだが、かなり奇妙なものになっている。よろしければ検索してみていただけたらと思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿