2024年10月10日木曜日

洗礼者ヨハネの毛皮

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jp/articles/-/76232
久しぶりに「名画で見る聖書の世界<新約編>」(西岡文彦/講談社)の書評。イエス誕生時の東方の三博士の名画などをぶっとばして、洗礼者ヨハネの名画のことを記しておこうと思う。洗礼者ヨハネとくれば、約束事で毛皮を着ているのである。そもそもヨハネはイエスのいとこにあたる。ルカの福音書では、聖母マリアの親戚であるエリザベトと老齢だった祭司ザカリアの息子であるが、天使の男子誕生の知らせを半信半疑だったザカリアは、ヨハネの名を神殿で告げるまで口が聞けなくなるというオマケ付きの話である。左の画像は、ラファエロによる聖母マリアとイエスといとこのヨハネなのだが、すでに毛皮をまとっている。おかしな幼子だが、身分証明である。(笑)

当時のユダヤ教は徹底した選民思想であり、神との契約もユダヤ人と結ばれたものとしていた。したがって、ユダヤ人以外の民族はユダヤ教に入信するためには洗礼が必須であったし、厳格なユダヤ人はユダヤ人の俗人の接触さえ一切絶っていた。こうした選民思想に疑問を突きつけたのがヨハネである。彼はあらゆる人を受け入れ、ヨルダン川の水に全身をつけて洗礼を行った。なにより彼が重視したのは「自らの罪を悔い改めること」で、洗礼はその儀式であった。「神の国は近い」と力説し、形骸化した律法主義に警鐘を鳴らし、多くの人々が洗礼を受けようと殺到した。イエスは、布教活動に先立ってヨハネの洗礼を受ける。「私こそあなたの洗礼を受けるべきなのに」と言うが乞われて洗礼を与えたわけだ。

http://isekineko.jp/greece-dafni.html
洗礼の名画はたくさんある。私はパブティストではないが、全身洗礼にこだわるので、ギリシア・アテネ近郊のダフニ修道院の壁画(11世紀のモザイク画)をあえて示したい。神の手と聖霊の象徴の鳩が描かれている。

その後、ヨハネは、サロメの見事な舞への褒美として、ヘロデ王(イエス誕生時に幼児を大量虐殺した王の息子)によって殺される。これは、前王の妃の妹にあたるサロメの母が、ヘロデ王の妻になっていたことを、ヨハネが「兄弟の妻を娶るのは良くない。」と諌めたことを恨んでのこと。有名な「サロメ」の話である。まあ、ヘンリー8世が、死んだ兄の許嫁(スペイン王家のカザリン)と結婚しなければならなかった話に似ている。当時の教皇は、スペイン王家のカール5世(=カルロス1世:カザリンは叔母にあたる)の意思を受けて、教会法を曲げて、ヘンリー8世を説得したのだが…。男女が逆だが、似ているような似ていないような話ではある。

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