2024年10月14日月曜日

「パントゥ哲学」前編

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「アフリカ哲学全史」(河野哲也著/ちくま新書)の第8章では、1945年に出版されたプラシード・タンベルの「パントゥ哲学」 の話が登場する。タンベルはベルギー生れのベルギー領コンゴ(現在のコンゴ人民共和国)で活動したフランシスコ会宣教師である。彼は、アフリカの伝統的な宗教や教えの中に、一種の存在論や世界観そして独自の思考法を見出し、それを「哲学」と呼んだ。以下、その内容。

アフリカ文化には、存在論や宇宙観が確かに根付いており、神を重視する文化である。生命力そのものである絶対的な存在である一者としての神が、その内なる創造的力によって生きとし生けるものに生命を与えている。生命は創造的な存在であり、その内なる生命によってすべての力は結びついている。力は生命的であり、それは本質的に関係的に動く。生きとし生けるものは、相互に影響を及ぼし合っており、その力は強まったり弱まったりする。

西洋的な独立の「実体」という考え方は、パントゥには異質である。個々人が孤立した魂を持つといった西洋近代の個人主義では、この力と生命の原理を理解できない。神と生命の結びつきは、物理的な因果性を超えて形而上学の因果性(=魔術)と考えられる。また生命は階層的であり、生命の段階をふんでいる。神の後に、最初の人類が力を持ち、動物から植物、鉱物へと生命力は下位になっていく。創造された世界の中心には人間がある。現在生きている人類は、死者のそれを含めて人間性の中心をなす。人間は、生者・死者共に、他の人間の存在(生命力)を強めたり、弱めたりできる。人間の力は、他の下位の生命(動物・植物・鉱物)に影響を与えることができ、理性のある存在(神・聖霊・人間)は、他の下位の存在への影響を介して他の理性的な存在に影響することができる。

…かなり長い記述なので、前編として記しておく。アフリカ・ウォッチャーとしての私の感想は、アフリカの呪術的なスタンスが示されており、アニミズムと共に、シャーマニズム的な論調(その可能性)になっていると思う。

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