2015年8月13日木曜日

高野秀行 西サハラ・マラソン

高野秀行の「世にも奇妙なマラソン大会」(集英社文庫/14年4月発行)を読んだ。高野氏は「謎の独立国家ソマリランド」の著者である。また、この本を読んでわかったのだが、かの宮田珠己氏とも親密な関係らしい。今回は、かなり宮田珠己(タマキング)的表現が使われていて、笑える。私は、こういう作風が大好き。

現在モロッコが支配している西サハラ。ここで行われる国際マラソン大会に、高野氏が参加するのである。西サハラの情報は非常に少ない。難民キャンプは国内に5箇所あるそうだ。スマラという難民キャンプが舞台であるのだが、男性は多くが出稼ぎにいくことが多いらしく、女性がかなり前面に出てくるらしい。イスラム圏では極めて珍しい。

また元スペイン領だった故に、(政府がなにもしないので民間の)スペイン人がこういう西サハラ支援を目的にする活動には熱心であるらしい。個人的支援者が、(20万人の西サハラ人の中で)8000人ほどの子供をスペイン本土で何年か教育を受けさせてているらしい。スペイン人、なかなかやるのである。

一方で、バスク人も、このマラソン大会に多く参加している。この辺が面白い。バスク人は、西サハラの人々をアミーゴだと思っている。かつてのスペイン領土内で独立を目指していることに強いシンパシーを抱いているのだという。実際、このマラソンの優勝者はバスク人で、バスクのTV局のクルーも来ていたという。(笑)「サハラ・リブレ!」「バスク・リブレ!」と表彰式でバスク人は叫び、西サハラの人々と大いに大いに盛り上がったらしい。リブレとは「~に自由を」を意味するスペイン語で、独立のスローガンである。

久しぶりに、実に痛快なノンフィクションであった。

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