ケニアの母子手帳 |
大阪大学の中村安秀先生という方が、30年ほど前インドネシアにJICA専門家として子供の死亡率を下げるプロジェクトに関わった際、母子手帳の必要性を感じ、研究を始められたとのこと。小さな町でモデルケースとして母子手帳を作製、州ごとに(母子手帳の)ファンが出来て、JICAやユニセフの支援も受けて全国に広げることに成功。現在では、理解が広がり、インドネシアやベトナムで企業が母子手帳の印刷を支援したいとの申し出も出てきたという。
2009年、ケニア人女性のミリアム・ウェレ博士(米のJ・ホプキンス大学で公衆衛生学博士号、ナイロビ大医学部長やWHOエチオピア事務所所長などを歴任した凄い人だ。)が、日本を訪れた際、中村先生と知り合い、「今まで、どうして知らなかったんだろう。」と衝撃を受け、翌年、ケニアでワークショップを開いた。一般の人はとても喜んだのだが、官僚トップの理解をえるのには時間がかかったそうだ。今は保健センターを通じで配布されるようになった。(JICAの杉下智彦アドバイザーによればケニアの母子手帳の配布率は93%にまでに拡大しているという。)さらにアフリカ各国に拡大するため、会議を何度も開催。昨年は12カ国が会議に参加、理解の輪が広がっているようだ。
ところで妊産婦の死亡をめぐって「アフリカにおける妊産婦死亡率削減を加速するキャンペーン」(CARMMA)が2009年発足。12年時点で37カ国が参加している。アフリカでは出産関連で毎日450人が死亡しており、世界の妊産婦死亡の57.4%を占めている。それでもCARMMAの成果で、関連予算の増額など徐々に成果が出始めている。ウェレ博士は、中でも母子手帳の役割が大きいと考えている。今回の「母子手帳国際会議」も、このCARMMAと連動しているようだ。アフリカでは医療機関が徒歩圏内にない所が多く、地域社会におけるヘルスワーカーの役割が大きい。彼らが母子手帳を有効活用することによって、高次医療機関とうまく連携し、リスクの高い出産を削減できるのではないかと期待しているわけだ。
こんな話も書かれていた。オックスフォード大学とJICAが共同で開発した母子手帳アプリがあるらしい。ケニア女性の携帯使用率が高い点に注目して開発され、アプリを使って妊婦検診や乳児検診に行くと小額だが一定のお金が送金される仕組み。「お金がないから行けない」という問題を防ぐだけでなく、病院を訪れる動機付けとしても有効だという。
…というような経過があって、カメルーンで今回第9回「母子手帳国際会議」が開かれるわけだ。しかしここで、大きな問題となるのは、識字率である。ケニアはアフリカでも識字率が高いし、経済的にもまだ恵まれているほうだ。母子手帳以前の女性の識字率が低いという問題を抱えている国も多いのが現実。そこを乗り越えていかねばならない。ウェレ博士をはじめとした多くのアフリカ女性の壮大な戦いを、もっともっと応援していくべきであると思った次第。
世界の母子手帳が使われている国・地域 NPO HANDS(Health and Development Service) HPより |
アフリカ以外にも目を移すと、ブータンやパレスチナが完全導入している。意外な世界地図だった。今回のエントリーに興味をもたれた方は是非、以下のHPもご覧ください。
http://www.hands.or.jp/mch/9thconf.html
中村医師の大学院 大阪教育大学大学院(夜間)からコンソーシアム大阪にて単位互換で 大阪大学で学ばせていただきました。
返信削除http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=114650
第43回医療功労賞・海外部門を受賞した大阪大教授
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素敵な社会の教諭ですね。
私は 御陵のある地域で 昭和天皇崩御 ベルリンの壁がなくなる ソビエト社会主義共和国連邦崩壊な時学生でした。