2012年3月15日木曜日

佐藤優「甦るロシア帝国」

プレビューしてみたら、先ほど10万人のアクセスを突破したようだ。32人の読者の皆さんをはじめ、多くの方に見ていただいて、ほんと感無量である。ありがたいことだ。

今日は、久しぶりに書評を書きたい。またまた佐藤優の本である。(笑)「甦るロシア帝国」というタイトルの文春文庫である。実は私は、全く新しい著作だと思って買ったのだが、単行本の「甦る怪物(リヴァイアサン)私のマルクス ロシア編」を改題し、巻末に「プーチン論」が付加されたものだった。

実は3年ほど前、私は単行本で「私のマルクス」の日本編もロシア編も読んだ。この2冊は佐藤優の思想的自伝にあたるもので、この2冊は佐藤優を読む上で欠かせない。とはいえ、このロシア編、再読だと気付いたのは、あと少しで読了というあたりだった。(笑)と、いうのも、佐藤優がモスクワ大学でプロテスタント神学の講義をする話が延々と続くのだが、初読の時よりはるかに理解が進んでいるのでバルト神学等の論理が分かるという新鮮さがあったからだと思う。「はじめての宗教論」、右巻・左巻(本年2月10日付ブログ参照)を読んで、ある程度神学の理解を深めると、さらに面白く読めるのである。

さて、巻末の「プーチン論」について書きたい。エリツィンの側近・ブルブリスの言葉が面白い。『ロシアには三種のエリートが存在する。第1カテゴリーは共産全体主義体制のエリート。第2カテゴリーは、エリツィンとの個人的関係、あるいはソ連崩壊期に民主運動に参加したために急速な階級的上昇を遂げた者。偶然のエリートと呼んでよい。国家を運営するエリートとしての基礎体力に欠ける。第3カテゴリーは未来のエリート。第1カテゴリーと第2カテゴリーは狼だ。お腹をいっぱいにしておかないと、第3カテゴリーのエリートを食べてしまう。』…このブルブリスの分析によると、プーチンは第2カテゴリーで、メドベージェフは第3カテゴリーらしい。

ところで、ユーラシア主義(ヨーロッパとアジアを結ぶ帝国主義)をプーチンはロシアの国家戦略の基調としているようだ。中国という世界の新たな「帝国主義の極」に対して、EU、日本と連携しながら、これに対抗し、自らも「新しい帝国主義の極」となろうとしているようだ。したがって、日本が東アジア共同体という日・中・韓の連携より、日本がアメリカと結ぶTPPを歓迎しているとの分析だ。…なるほど。

一方、ロシアにはビザンチン帝国の『カエサルパピズム』(皇帝教皇主義:国家システムだけでなく人間の内面も指導する独裁政治)の傾向があるという。…今回の大統領・首相の交代劇も、狼である第2カテゴリーのエリート・プーチンらしいといえようか。なかなか面白い。

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