2023年2月7日火曜日

資本主義のオルタナティヴ3

グローバル資本主義(グローバリズム)が、オルタナティヴである、という動きについて、さらにエントリーしておきたい。参考文献は、前回も引用した「世界最終戦争の正体」(馬渕睦夫)である。

反ロシア主義者でオバマの師であり外交顧問を努めたブレジンスキーは、「国家の評価は民主化の度合いだけでなく、グローバル化の度合いによってなされるべきである。グローバル化が公平な競争の機会を全てのプレーヤーに提供するという考え方は、現実かどうかに関係なく、新しいグローバル化という教義に歴史的な正当性を与える重要な根拠になった。」(『孤独な帝国アメリカ』より)と論じている。グローバル化は、実際には世界に不公平をもたらすものではあるが、歴史的な必然の流れであるので正当性を持つと断言しているわけだ。このグローバル神話を実現するために、アメリカはグローバル化が遅れている国に介入することが正当化される。まず民主化、次に民営化、最後にグローバル化を強要する三段階のレジーム・チェンジが、彼によってアメリカの一国行動主義(ユニラテラリズム)の思想的根拠になったのである。

2003年から起こった東欧(グルジア、ウクライナ、キルギス)のカラー革命は、選挙の不正がきっかけとなって政権交代が行われた。この不正の判断は、アメリカ国務省の民主化資金援助を受けているNGOと連携している各国のNGOが摘発した。

…開発経済学を学んできた身としては、ブレジンスキーなんぞのグローバル資本主義には凄まじい矛盾を感じざるをえない。欧米は途上国の民族構成や文化を無視して、援助という鎖でしばりながら民主化を押し付けてきた。その結果デモクレイジーが起こり、一部の権力層による開発独裁が日常化して、結局途上国内でも格差が拡大している。たしかに、民主主義は、資本主義的な発達を促す装置であり、近代国家には必要だが、途上国が経済的に飛翔するためには、自由経済の枠内にいるとはしごを外されてしまう。世界史を振り返ると、最先進国だったイギリス以外、先進国は一度は保護貿易を一定期間行い産業革命=工業化に舵を切っている。ナポレオンの大陸封鎖令、ドイツのビスマルクの保護貿易政策、アメリカの米英戦争から南北戦争期などである。何のための民主化、何のための自由経済…。

…マレーシアは、そんな中でうまく立ち回ってきたように思う。独立戦争ナシ。多くの途上国が独立に精力を使いマイナスからのスタートだったが、マレーシアは残留した中華系やインド系の人々の能力を活かしながら、日本などの外資とスキルを得て、工業化に成功した。しかし、国産車保護のための保護貿易なども臨機応変に随時行っている。中進国として、ASEAN内でも経済的にいい位置につけている。しかし、グローバル資本主義が覆いかぶさってくるとどうなるかはわからない。

…アフリカの多くの国は、宗主国が国家経営の費用を削減する目的で独立を認めた「新しいカタチの植民地」である。自由経済を強要され発展する=工業化の余地がない。おそらく、このグローバル資本主義という神話の中で、さらなる格差が拡大するのは目に見えている。なんという悲しい不条理な神話であろうか。

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