今年のセンター試験の「倫理」の問題、昨年も書いたが自分の刀を錆びつかせないためにじっくりと見てみた。よく、センター試験は豪華な問題だと言われる。高校で行う定期考査などは、問題用紙があまりに多いと配布が大変なので、多くてもB4両面刷りで2枚・計4面が限界かと思うのだ。センター試験は冊子で、問題もゆったりと書かれているし、選択肢も普通は4択が多い。今回は、正誤の組み合わせや哲学者名の組み合わせなど4択以上の問題もたくさんでてきた。昨年も指摘したが、普通の高校で2単位の授業では到底カバーできないだろう哲学者や思想家も、今回もそこそこ出てきた。そんな哲学者名が出てきても、多くはキーワードや類推でカバーできる。そこが倫理の試験の醍醐味でもある。
話題の東進のHPを参考までに見てみたら、問題32に出てくるカントの著作(b)は難しいと書いてあった。正答は、「判断力批判」であるのだが、弁証法的理性批判などという変な著作名との二択なので、三大批判書(純粋理性批判・実践理性批判・判断力批判)を毎回教えている私からすれば、これは秒殺問題のひとつである。ちなみにaの正答の「道徳法則」も秒殺である。
やはり、倫理は教える側の問題でもあるのだなと思う。カントの思想は、純粋理性批判の先天的認識形式をきちっと教えなければ、またなぜカントが形而上学を再編し、道徳形而上学で物自体の世界を再構築(=実践理性批判)したかを理解しなければ、「カント以前の哲学(大陸合理論とイギリス経験論)はカントに流れ、カント以後の哲学(ドイツ観念論)はカントから流れた。」というヨーロッパ近代哲学の幹の部分が理解できない。
判断力批判は、これに並ぶ三代批判書である。よく使われる「真善美」という価値、真について書かれたのが純粋理性批判なら、善については実践理性批判、そして美については判断力批判というわけだ。きわめて重要な著作であると私は思う。こういう倫理の教師の哲学史における取捨選択が大きく受験生に影響を与えるのだなあと改めて思った次第。と、言って私の授業(取捨選択)が最高だといっているわけではない。年によっては、全く教えていないトコロが出たりするのだ。問題は、受験生の感性・悟性を鍛えに鍛えて、類推できる能力を向上させることが大切だと思うのだ。
うーん。こんなことを書いていたら、またセンター試験に生徒と共にぶつかっていく教師生活もいいな、などと思ってしまうのだった。(笑)
2014年1月21日火曜日
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