2014年1月20日月曜日

日経 グローバル・オピニオン

思わずモーニングで読んだ日経を、改めてコンビニで買ってしまった。それくらい重要な記事があったのだ。MIT(マサチューセッツ工科大学)のダロン・アセモグル教授(トルコ出身の経済学者)の「新旧交代が成長促す」という『グローバル・オピニオン』である。センター試験の倫理の問題について今日は書くつもりだったのだが、それは後日としてでも是非エントリーしておきたい。引用が長くなるが、極めて重要な示唆がここに述べられている。

繁栄する国と破綻して貧しい国の違いを決定付ける要因は、政治経済制度の重要性であることは歴史的事実が証明している。幅広い政治参加、法と秩序の確立、財産権の保障、市場経済を伴う「包括的制度」を実現した欧米や日本は今の世界において、経済的に最も豊かだ。一方、北朝鮮、エジプト、アフリカ諸国の多くのように政治権力が一部に集中し、多数の国民から富を奪う「収奪的制度」の国々は、人々に貯蓄、投資、発明を励むインセンティブ(誘因)を与えることができず貧しいままだ。

軍事独裁をはじめとする収奪的制度下でも、中央集権、海外からの技術移転、農村から都市への労働力移動といった条件次第で、過去のブラジル、メキシコ、ソ連(現ロシア)、トルコなどのように短期間で比較的高い水準の経済成長を実現できる。

ここで肝心なのは、持続的な成長に不可欠なイノベーション(技術革新)が起きないため、繁栄が長続きしないことである。既得権益層はイノベーションが引き起こす創造的破壊や新旧交代を恐れ、さらなる成長の芽を摘む。

この命題を中国にあてはめると、日常的に政治的不合理な決定と腐敗、あるいは国有企業や銀行による資源の配分や機会均等をゆがめている。20年程度の時間軸で見れば、このままでは、中所得国からの脱出やイノベーションは難しいといえる。

一方、米国における所得格差の拡大は包括的な制度の維持を阻害している。一握りがあまりに豊かで強大になり、税制、金融規制、労働行政といった分野で政治的な影響力を行使し、格差是正政策を困難にしている。

NSAによる膨大な情報収集や、日本の特定秘密保護法制定など国家が情報技術を駆使して国民を監視したり、独占したりする動きも懸念される。そのような社会の自由な言論や創作、イノベーションを阻害するからだ。

中世に栄えたベネチアは、既存のエリートが政治力の独占を強め、財産を持たない若者でも貿易業務に参入できた制度を国営化したため、成長は鈍り、人口も減少した。このかつての経済大国のたどった道は、包括的な制度が覆されれば繁栄は反転しかねないという事実を想起させる。

…豊かになる国となるための条件としての「近代国家論(民主主義の確立・資本主義の確立・国民国家の成立)」の、さらに現代的な命題が上記の持続的な成長のためのイノベーションを進める「包括的制度」(幅広い政治参加・法と秩序の確立、財産権の保障、市場経済)であるわけだ。常に新旧交代を行える自由な社会制度こそが持続可能な未来を開く。極めて重要な示唆であると私は思う。

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