「天皇と東大Ⅲ」(立花隆/文春文庫)を読んでいる。先日、学研都市線の一部がストップした時、途中下車した書店で発見した。Ⅱ巻を読んで久しい。Ⅲ巻は滝川(京大)事件の話から始まっている。政治経済の授業で、基本的人権の中の「学問の自由」、美濃部達吉の「天皇機関説」とともによく資料集などに載っている話である。立花隆の事件への迫り方は、いまさらながら凄い。
この滝川事件には、意外な人物が絡んでいた。まずは当時の文相だった鳩山一郎(あのおかしな宇宙人鳩山首相の祖父)。さらに、この滝川教授の件を国会で取り上げた宮沢裕(宮沢喜一元首相の父)、さらに当時、京大の学生だった宇都宮徳馬、水田三喜男などである。
滝川教授を貶めたのは、蓑田胸喜という人物。細川隆元は蓑田を「日本のマッカーシー」と名付けているが、まさにその名にふさわしい。次から次に自分の気に入らない学者や言論人をヤリ玉に挙げて、共産主義者、反国体思想、不忠反逆思想、革命賛美者などのレッテルを貼りこれに執拗な攻撃を加え、当局にその著書の発禁を要請したり、公職からの辞任を求めたり、出版法違反で当局が起訴することを求めたりした。滝川教授がその第一号で、それ以後も、執拗な攻撃を受けた人々に、西田幾多郎、田辺元、田中耕太郎、さらには三木清等々。
とんでもない人物なのだ。彼の論は支離滅裂で、京大での講演会で宇都宮徳馬たちが蓑田胸喜を「蓑田狂気」と書いたのは、あながち間違っていない。どうやら、この蓑田を後押ししたのは京大での軍事教練を推進しようとした軍部であったらしい。満州事変下の時代の空気は、このような「狂気」が蔓延していたのだ。蓑田はその十年に満たない間の最大の影響力を振るったイデオローグであり、同時に行動者だった。「大政翼賛、臣道実践」というスローガンを考え出したのも蓑田だという。
ところで、彼が左翼を攻撃した際に使ったコトバに『言語魔術師』というのがあるらしい。立花隆は彼こそ右翼最大の『言語魔術師』だと主張している。…『言語魔術師』。いやなコトバだ。今も跋扈してるような気がする。
2014年1月28日火曜日
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