2013年3月7日木曜日

ESDのための仮想世界ゲーム7

先日の前任校での卒業式の際、OBのI君に、「先生のアフリカのアクティビティ、すごく進歩してるんですね。僕らの頃にはあまりやってもらってません。」と言われた。うむ。確かにそうだ。JICA大阪に生徒諸君をどんどん行かせたけれど、私自身のアフリカ開発経済学は、まだまだ未熟だったと思う。オリジナルでやれたのは、「ケニア人生双六」くらい。担任業務で手がいっぱいで、バーンガや南北貿易ゲーム、ロールプレイやディベートなど様々なアクティビティはやったけど、アフリカを学ぶオリジナル教材を研究しだすのは、I君たちが卒業した後からのことだ。

学問は地道な積み重ねである。私のアフリカ開発経済学を中核とした教材づくりは、「学び」の深化と共に変化せざるを得ない。その時、その時のベストだと思うアクティビティを構想し、実践してきたつもりだ。、

今回の『ESDのための仮想世界ゲーム(高校生版)』も、そういう時間的な流れの中で構想、実践されたものだと考えている。仮想世界ゲームをほぼ規定どうりやってみた第一段階。(協力してくれた前任校の国語科3年生も、この4月に大学4回生となる。)さらにその次の年度で8校合同で行った。この時、高校生の段階では個人で行うのに無理があるのではないか?葛藤せざるを得ない部分をもっとゆるやかに出来ないか?と、U先生と検討し直したのが、『ESDのための仮想世界ゲーム(高校生版)』である。その後私は転勤し、2年目の3学期にやっと実践に移したわけだ。

総括をしておきたい。
インフルエンザ罹患のおかげで、残念ながら生徒諸君の声を直接聞くことはできなかったが、学年末考査の試験問題が『ESDのための仮想世界ゲーム(高校生版)を論ぜよ。』だったので、文章で残っている。「もっとリアリティを出せるのでは?」など、なかなか面白いものもあったのだが、一番指摘が多かったのが、「株」の話である。このゲームでは、マネーサプライを増やすのには株と労働チケットが必要だ。先進国の企業が株を売り(資本の蓄積)、労働チケットを購入し、その数で順位を競いつつ、株券(一律30sim)の総額のほぼ5割が利益となって返ってくる仕組みになっていた。本来の仮想世界ゲームは、生産単位というややこしいシステムだったので一気に簡素化したのだが、参加者が29名だったこともあって、当初はマネーサプライがなかなか増えなかったのだ。中盤になって、日本の首相だったK君が、株購入のマジックを導き出す。「現金で株を購入すること」という条件を逆手にとって、信用創造のような購入方法を考え出した。合法であるが、無限に株を購入できる。しかも、私のミスで、株の利益を多めに支払ってしまった。仮想世界は、かなりのインフレになったわけだが、そういう状況故にODA(無償・有償)や投資が可能となり、途上国も活気を持つこととなった。最終的には目標だった途上国でも企業を設置できるまでになった。混乱の中で、サプライズな事件(内乱や鉱産資源の開発など)を起こす余裕もなく、私としてはかなり不本意なまま終わったのだった。

オリジナルゲームでは、数値の設定がゲームを決定づける。そういう経験知が必要なのだ。十分なシミュレーションをしないまま、数値決定をしたと反省している。そして、何よりも、先進国の国際貢献度を勝敗の基準としたわけだが、やはりODAの額が中心となっている。こそっとマニュアルでは投資の方がポイントが高く設定したのだが、通貨量が少ない時は、ついつい無償のODAが多用された。もうODAの額で勝敗を決めるのは正しいとはいえないと私は強く感じている。

「経済大陸アフリカ」の内容を全てエントリーした後、あえて総括しているのは、このゲーム自体が今や古めかしい開発経済学の常識上にあったことを私は悔しく思っているからだ。今回の『ESDのための仮想世界ゲーム(高校生版)』、残念ながら元の仮想世界ゲームの良さまで消してしまったような気がするのだった。この失敗は、次に生かしたい。

とはいえ、生徒諸君はなかなかこのゲーム楽しんでくれたようで、前向きな感想ばかりだった。本校の素直な生徒諸君に感謝である。

0 件のコメント:

コメントを投稿