早咲きのサクラと京大稲森財団記念館 |
今回の講演会は、アフリカの潜在力を活用する紛争解決がテーマである。講演会のタイトルは「アフリカの平和構築 現場からの課題と今後の選択肢」である。アフリカには様々な問題がある。その最たる問題が治安である。旧宗主国が民族分布を無視して設定したパッチワークのような国境線や、資源の呪い、そしてデモクレイジー。未だアフリカでは内戦、暴動、テロ、集団抗争などが絶えない。
瀬谷さんは「、二人以上の人間がいれば意見のくいちがいが生まれる。これを暴力的に解決しようとすれば、それらが全て紛争となる。」と言われた。持ち時間を大幅に越えて、様々な事例を引きながら、アフリカの平和構築について語られたのだが、それを全てエントリーすることはできない。特に印象に残ったことを下記残しておこう。
それは、ケニアのムクル・スラムでの話だ。瀬谷さんは、現在も武装解除などのレクチャーには関わっておられるが、このところNGO(JCCP)の事務局長として様々な平和構築に主に関わっておられる。ケニアでは、私のブログで何度か触れたが前回の大統領選挙の結果をめぐって、キクユ人とルオ人を中心に大暴動が起こった。ムクル・スラムでも悲劇的な暴動となったらしい。瀬谷さんたちは、平和構築のNGOとして、まずコミュニティ内でカウンセラーとなる人材を育成したそうだ。スラムには、多くの民族が共生しているが、なかなか和解が進まなかったらしい。瀬谷さんのモットーは、「私たちはあなた方ができないことだけをやる。」である。カウンセラーは当然現地の人々である。二度とこのような悲劇的な暴動が起こらないよう、被害者、加害者にカウンセリングを行ったのだ。様々なイベント(ヒップホップ大会やサッカー大会、飲み会など)を行いながら、自然に「和解の輪」を拡大していったのだ。次に加害者になりそうな若者も吸収していったらしい。心のケアを行う事で、彼ら自身に考えてもらことが大切なのだという。具体的に考えていく。何故加害者になったのか?簡単なコトバのプロパガンダに踊らされた加害者。日ごろの不満や不安が根っこにある。あおった人はどうなったか?大統領と首相を分け合い利益を得たが、あおられた人は結局貧困がひどくなっただけだ。何故被害者になったのか?暗い道。汚い環境…。研修によって、彼ら自身が、対立回避に動いていく。スラムを清掃し、「環境」から変えていく。
少なくとも今現在、ムクル・スラムで今回の大統領選による民族対立は回避されているらしい。おそろしく忍耐のいる活動である。質問会では、ケニアの状況は他のアフリカ諸国に比べて特に教育程度が高い故に可能であったのでは?という声が挙がった。私も同感。しかし、ケニアのように教育程度が上がれば、他の国にも同様の自助的な平和構築へ道が開かれるだろう。アフリカの潜在力はたしかにあるのだ。
もちろん結局はガバナンスの問題に帰着してしまう。警察への信頼を構築する必要性など、瀬谷さんの話が、極めて開発経済学的な話になったのは当然である。で、面白いのは瀬谷さんも民間企業の力を借りるべきだと考えていることである。政府、企業、NGOが、その国の開発スピードに合わせて対応する必要性を強調されていたのだった。…うむ。平野先生の「経済大陸アフリカ」の結論と全く同様である。
講演会終了後、瀬谷さんの著書「職業は武装解除」を手にした女性たちが列をつくっていた。あの中から第二、第三の瀬谷さんのような国際協力士が生まれるかもと思うと、嬉しく、そしてちょっぴり羨ましくもあるのだった。(笑)
瀬谷ルミ子さん、京大の皆さん、今日もまた勉強になりました。新しいアクティビティの参考にさせていただきます。ありがとうございました。
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