2025年3月25日火曜日

経済で読み解く中世史1

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「経済で読み解く世界史」(宇山卓栄著/扶桑社新書)の書評第4回。今回は、温暖化による食料調達のロジスティクス(調達ルート)の変化とノルマン人の活躍について。

東ローマ帝国のユスティニアヌス帝の時代、地中海の覇権を失い、食料確保のため広大な領域を確保しなければならず財政は逼迫していた。ところがその末期、550年頃から温暖化が始まる。ゲルマン人が内陸部の森林を開墾し農業生産力が高まり、東ローマ帝国の食料調達のロジスティクスに依存する必要がなくなり、これ幸いと東ローマも領土を縮小する。

食料調達のロジスティクスを握ったゲルマン人は、小王国を建国し、中でもフランク族はカトリックに改宗し教皇の権威を借りてゲルマンの所属を併合、西ヨーロッパの盟主となる。9世紀には、食糧増産とそれによる人口増で都市が形成される。これらを結ぶネットワークが生まれる。この物資の運搬は海運が担った。バルト海や北海沿岸に物流拠点が形成された。

この物流を担ったのがバイキング(=入江の民)と呼ばれたノルマン人(=北方の人)である。古来より漁業を営み、造船技術や操船技術に優れていた彼らは、バルト海・北海の横断だけでなく、セーヌ・ライン・エルベ・オーデル川などを縦断し、交易ネットワークを形成した。

この交易のネットワークにより巨万の富を得たノルマン人は自らの国を作っていく。ルス族のノブゴロド国はロシア(ルスから来ている)の母体。ドーヴァー海峡を挟んだノルマン王国はイギリスの母体となった。

…受験の世界史では、中世は教皇権の強い暗黒の時代のように説かれるが、経済からみると発展の時代であったわけだ。

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