2025年3月27日木曜日

経済で読み解く中世史3

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「経済で読み解く世界史」(宇山卓栄著/扶桑社新書)の書評第6回は、盛唐時代の富の配分と経済成長について。

随王朝は、強力な軍閥勢力を内部に抱えたまま、運河建設や江南開発に力を入れたので、軍閥に足をすくわれ崩壊した。よって唐の李世民(太宗/画像参照)は、各地の軍閥を徹底的に武力で粉砕し、軍権を朝廷のみに集約、各地の有力者には触れさせなかった。さらに隋の均田制を引き継ぎ、民衆の土地所有を平等化、戸籍によって一元管理し、同時に地方の強力な勢力形成を防止した。

しかし、経済発展によって、貧富の差が拡大し、富を蓄えた有産階級が生まれていく一方で、インフレや重税に耐えきれず逃亡する貧農が急増、逃戸(とうこ)と呼ばれた放棄地が増え、課税が困難になった応急処置として、逃戸を売買することを認めた。これによって一部の富裕層が大地主化、地方豪族化してしまい、中央集権のコントロールが失われた。ところが、この時代は「盛唐」と呼ばれ、朝鮮半島やウィグルを制圧し、シルクロード交易で莫大な収益を得、莫大な富が基盤となり文化・芸術を振興させた。

支配階級が、土地などの生産手段を独占し多数の人間を貧困に閉じ込めるという利己的行為は、経済学的には理にかなっていると見ることができる、と著者は書いている。富の余剰を蓄積し、それを集中的に有効投資し、生産性を挙げることができるからである。富は多数の人間に均分されると余剰が生まれず、投資は規模の効率性を失うからである。

支配階級の投資効率が上がると経済成長していくが、最適値を超え、貧富の差が拡大しすぎるとと経済成長は停滞し始める。この理由は2つあって、富裕層の消費傾向は一般層に比べ低いので、消費需要が停滞すること、さらに投資効率が低下して供給過剰に陥りやすい(限界収益逓減の法則)ことである。「盛唐」は、需給バランスが崩れ、黄巣の乱などによって滅亡していったのである。

https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=70440?site=nli
…この経済成長と格差の問題は、現代においても実に重要な問題である。上記のグラフは、2022年のIMFのデータをもとに、横軸に国内経済格差、縦軸に経済成長率をおいたものである。青い曲線が投資効率を示しており、最適値はインドの近くにある。(中国の数値は全く信用できない。)南アやブラジルは需給バランスが崩れ、かなり厳しいといえる。

…現在の中国では、まさに反社勢力と化した共産党幹部の富裕層と、給与も払われない貧困層との分裂が進んでおり需給バランスがかなり崩れ、経済は生産過剰になっている。”黄巣の乱”のようなことが起こる危険水域に入っていると言ってよいだろう。

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