![]() |
https://shop.zakkaya-poppo.jp/products/ |
WWⅡ後、アメリカはソ連の脅威に対抗するため、国家安全保証法により、国家安全保障会議(NSC)、国防総省、CIAを設立し、軍事・諜報機関の関連予算を引き上げる。1950年、国家安全保障会議は、NSC-68という文書で軍事力を緊急に増強する必要性を強調した。具体的には、軍事支出の水準を従来の4倍に引き上げ、議会の予算総額の1/3に抑えるという協定の破棄を求めるものだった。軍拡の財源は、低金利政策と物価安定を維持するために、国債発行を避け、非軍事政府支出の削減(GDPの比5.4%に)と増税(所得税はGDPの比1.32%に)で賄う方針を立てたのだが、問題は国民への説得だった。トルーマンは慎重に大統領経済諮問委員会に調査させる。ケインズ派の経済学者は、軍拡の有効需要による景気刺激効果を、また原爆・水爆の核爆弾製造は安価に大量生産が可能で効率的戦力整備である点も主張されていた。そこに朝鮮戦争が起こり、NSC-68は全面採用されたのだった。
1951年度の国防予算は$482億に膨れ上がった。統合参謀本部は$823億を要求したが、議会は$555億で承認、アメリカは、軍拡路線に急激に舵を切る。冷戦期のアメリカにおいては、軍拡路線の税負担は一般国民にスムーズに受け入れられた。WWⅡ以降、軍需物資の生産が鉱工業生産全体の大きなシェアを占める産業構造になっており、軍事産業に関わる膨大な数の労働者はそれを強く望んだ。1951年の軍拡まで軍需関係労働者の労働運動は活発化し、1400万人の労働組合となり年間500万人規模のストライキを展開していた。軍拡により雇用が安定し、民需産業より20~30%程度高い賃金を得られた労働組合は強力になっていった。アメリカ社会で巨大な権益を形成していたのである。
本来なら持続不可能な軍拡=財政政策であったが、高度経済成長により維持されたのである。「アメリカに必要なものは永遠に続く戦争である。」という大統領経済諮問委員会のウィルソンの言葉は、端的に内実を表していたのである。
1961年アイゼンハワー(画像は大統領選時の缶バッチ)は、大統領退任演説で肥大化する軍需産業を「軍産複合体」と呼び警告を発した。WWⅡのノルマンディー上陸作戦の英雄故に、実に重い言である。典型的な軍産複合体は、ロッキード社とボーイング社(航空機)、ノースロップ・グラマン社(軍艦・人工衛星)、レイセオン社(ミサイル)、ダウケミカル社とデュポン社(化学)、GE、ハリバートン社(資源生産設備)、ベクテル社(ゼネコン)、ディロンリード社(軍事商社)と言われ、石油メジャー(スタンダード石油系)なども含まれる。
アメリカは、現在もなお平常時も恒常的な戦時体制に匹敵する国防費を支出しており、アイゼンハワーの警告は、活かされているとは言い難いのである。