2025年4月6日日曜日

経済で読み解く近世史5

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「経済で読み解く世界史」(宇山卓栄著/扶桑社新書)の書評第13回目は、清王朝の利害調整能力について。

満州という地名は文殊(マンジュ)菩薩を崇拝していたことから満州の漢字が当てられたからだそうで、清王朝はこの満州人の王朝である。彼らの歴史は古代から、異民族として本土に何度も攻め込みながらも敗れてきた。モンゴルの分裂をうまく利用しつつ吸収し軍事的に大勢力となり、明を滅ぼし、中国統一を成し遂げるのである。

さて、明時代には、人頭税と土地税の両建ての税制であった。異民族王朝であった清は、富の分配問題に神経を注ぎ、地丁銀という税制をとった。これは、明時代、人頭税に苦しんだ民衆が戸籍を届けず、法的にこの世に存在しない者が人口の70%もいた。明朝が慢性的な財政不足に陥ったのはこれ故である。18世紀初頭、康熙帝が人口調査を行ったものの6000万人しかいなかった。(実際はその3~4倍)そこで思い切って人頭税を廃止を宣言、人口は3億人に一気に増加した。さらに、この税収減を豊かな土地所有者のみの土地税とした。漢人の大土地所有者は、異民族支配故に土地を没収されると覚悟していたので、意外に喜んで土地税に応じたのである。こうして地丁銀は、土地を持たない平民にも、土地所有を保証された豪族にも歓迎され、清は260年間も支配を継続できたのである。

この地丁銀という税制は、長年、満州族がモンゴルや朝鮮、中国本土との互市貿易をして積み重ねきた忍耐力と知恵の結晶だと著者は記している。

…やっと近世が終わり、近代に突入する。経済から読み解くと、様々な世界史的常識の裏に潜むモノが浮かんでくるわけで、実に面白い。本日、学院の教頭先生から、Classiというアプリで、時間割が送られてきた。いよいよ授業が始まる。楽しみである。

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