2015年6月18日木曜日

新書 ニュルンベルグ裁判を読む。

妻は、私の横でまた「聖なる嘘つき」というホロコーストの映画を見ている。古い映画らしく、今のTVのサイズに合わないので、下の字幕が全部読めない。ワルシャワのゲットーの話らしい。英語だが私のリスニング能力ではきついので、途中で見るのをやめて、エントリーしている次第。(笑)

今日も息子宛にホロコーストの本がアマゾンから送られてきた。(息子夫婦は現在もイスラエルにいるが、私たちのポーランド行に合流することになった。)向こうで手渡すことになると思うが、我が家のベクトルは完全にポーランドに向いている。

私といえば、中公新書の「ニュルンベルグ裁判」(アンネ・ヴァインケ著/板橋拓巳訳本年4月25日発行)を読んでいる。ニュルンベルグ裁判は、ナチス・ドイツの戦争犯罪を裁いた国際軍事裁判である。もちろん以前から知っているが、どうしても日本の東京裁判の方に目がいっていまい、これまできちんと読んでいなかった。この際、読んでおこうと思ったのだ。

当然、東京裁判より早く始まっているので、東京裁判でも使われた平和に対する罪や人道に対する罪といった概念の話が出てくる。ただ、その背景は極めて複雑である。米・英・仏・ソの立場は微妙に違う。もちろん主導したのは米国だが、英国は最初、裁判などせずナチ指導部を全員死刑にすべしなどという立場をとっていたし、ソ連はカチンの森の虐殺をナチの仕業にするよう動くし、フランスもヴィシー政権下でナチに協力した負い目があるから、歯切れが悪い。

…少し前、妻と「黄色い星の子供たち」というフランスでのユダヤ人迫害の映画も見た。少しだけ救いのあるホロコースト映画だった。フランスという洗練された土地柄もあったと思うが、ヴィシー政権下のフランス官憲もナチ同様の罪を犯していることは確かだ。

この本は、ゲーリングやルドルフ・ヘスなどを裁いた、いわゆるニュルンベルグ裁判だけでなく、その後の米国占領下で行われた医学者や法学者などを裁いた12の継続裁判についても書かれている。著者はドイツ人の中堅の研究者で、訳者はその信頼性は高いと訳者のまえがきで評しているのだが、P54まで読み進んで、一気に興が削がれた。

…「脱褐色の煉獄」という表現が出てくる。褐色のナチの制服を連想させる地獄から脱出する煉獄を意味するとあり、なかなか面白いと思った瞬間、次の文字が目に飛び込んできた。煉獄とはダンテの『新曲』からの比喩である。…?ダンテの新曲?神曲ではあるまいか。訳者と編集者と中央公論社の知性を根底から疑うよう誤植である。あーあ。

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