正直な感想は、始めてアフリカを旅した”素人の紀行文”というものだった。誰もが、最初からアフリカに詳しいわけではない。私もケニアに始めて行った時の紀行文を読むと、自分の認識の浅さに赤面する。それと同じ恥ずかしさが、この本にはある。これは始めてアフリカを旅した紀行文には、当然のことであって、決して著者を責めているのではない。
さて、この本はイギリスの旅行会社が運営する「オアシス号」というトラック・バスで、欧米の旅行者(老若男女、国籍も様々)と共に、ジブラルタルからモロッコ、西サハラと南下し、モーリタニアからマリ、ブルキナ、ガーナから東へ。ナイジェリア、カメルーンと移動し南下。ガボン、コンゴ、アンゴラ、ナミビア、南アへ。次に北上しボツワナ、ジンバブエからマラウイ、タンザニア、ケニア、ウガンダ・ルワンダ、エチオピア、スーダン、エジプトと旅した記録である。
黄色いトラック・バスがオアシス号 |
『波止場に到着したどの船も、荷下ろしと荷積みを同時に行うので、周辺はまさにカオス状態だった。そんな喧噪の中、ぼくたちはオアシス号と共にフェリーに乗り込んだ。突然ぼくの目の前で、積荷の石鹸段ボール箱をばらし、盗みを働いた少年がつかまった。警備員に棍棒と太いムチでボコボコにされた。目は切れている。血に染まった赤い歯、背中の皮膚は裂け、めくれていた。その傷口から血がにじみ出ている。汗や体臭の強烈な匂いと罵声がうずまくなか、少年はほぼ半殺しの状態で、フェリーからつまみ出された。その光景を見ても誰も止めない。これでいいのか。ぼくは固まってしまった。さらに驚いたのは次の瞬間だった。出航したとたん、何事もなかったように乗船客たちがみんなリズムをとって歌い出したのだ。まるでシュールな映画のワンシーンのようだった。「これはすごい!」とブライアンやスティーブが叫んだ。「これこそがアフリカだ。この体験をするためにアフリカに来たんだ」と興奮していた。クリスとカレンはそんな彼らを横眼で見て「バカみたい」とつぶやいた。』
これだけ長い旅の記録を、それぞれ各国別にまとめているのだが、やはり無理がある。本当はもっともっとイロイロな事があったのだと思う。有る意味「インパラの朝」ほど、ずばっと切り捨てていないが故に、ホドホドの紀行文になってしまっているのが惜しい。とはいえ、なかなか面白い記述がそこそこあって、「秒読」(一気に読んでしまった)となった次第。
そうそう、マラウイのところで、こんな一節がある。『マラウイ湖畔、カンデビーチを散歩していると、若い男2人と目があった。ギフトとシスコと名乗る自称高校生。「日本の車はいい」「昔この近くでウナギを探している日本人がいた」など、わけのわからないことを言いながら、しつこくつきまとう。…』
いやいや、太字の部分については、わけのわからないことではない。著者はご存じないようだが、『アフリカにょろり旅』という本がある。アフリカで、ウナギを探す話なのである。ちゃんとした水産関係の学術調査隊の話である。マラウイにも行っているのである。ギフト君とシスコ君は正しい情報を伝えているのだ。”こういう所にピン”とくる私は、かなりマニアック。アフリカ・フェチなのかもしれないと苦笑するのである。
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