2011年6月3日金曜日

עשרת+הדיברות‎ (十戒)

世界史Bのヘブライズム特別講義で、今日は出エジプト記を教えていた。なんといっても十戒の話がメインになる。
この十戒は、ユダヤ教の、もっと言えばキリスト教やイスラームを含めた一神教の律法の根本中の根本である。異文化理解の上でも欠かせない。一応、ユダヤ教のスタンダードな十戒を記しておくと…

 1、わたしのほかに、ほかの神々があってはならない。
 2、自分のために、偶像をつくってはならない。
 3、主の御名をみだりに唱えてはならない。
 4、安息日を覚えて、これを聖なる日とせよ。
 5、父と母を敬え。
 6、殺してはならない。
 7、姦淫してはならない。
 8、盗んではならない。
 9、隣人に対し、偽りの証言をしてはならない。
 10、隣人の家のものを欲しがってはならない。

…となる。今回の授業では、特に、2.の偶像の話を中心にした。ユダヤ教では当然偶像崇拝はない。イスラームも同様である。キリスト教は若干微妙である。そもそもこの律法は人間が守れないモノと考えている(律法の成就)から、厳密に守ろうとはしていない。カトリックでは、微妙な話だが、神の子イエスの偶像や神の子イエスを生んだマリアの偶像はOKである。東方正教会では、偶像(彫刻)はないが、絵はOKとし、イコンを並べている。とはいえ、さすがに神そのものはもろに描かない。

バーミヤンの今は無き大仏
ユダヤやイスラームの厳密な偶像崇拝禁止という発想は、我々にはどうもわかりにくい。先日久しぶりに成毛眞さんのブログを覗いたら、私も読んで感銘した「戦争広告代理店」とともに「大仏破壊」の紹介がされていた。その記憶がふと浮かんだのか、世界遺産であったバーミヤンの大仏の話をした。生徒にとって、バーミヤンといえば中華料理のチェーン店である。(笑)バーミヤンはアフガニスタンにあること、昔仏教が盛んで岩壁に大仏が掘られたが、イスラームの支配下に入ってから、偶像崇拝だということで、顔の部分が削り取られたこと、さらに9.11の直前に、そのプレリュードとしてタリバンやアルカイーダによって大仏が破壊されたことなどを話した。我々からすると、大いなる暴挙なのだが、十戒から見ると、偶像崇拝の禁止という立場を彼らが取るということを押さえておくべきであろう。

さて、「殺すなかれ」が6番目にあるということも重要である。以前読んだ本に載っていた、こんな話をした。サウジアラビアの新聞記事で、日本特集が組まれており、様々な角度から日本を紹介していたという。その中に、『日本はアメリカに原爆を落とされ、戦争に負けたが経済復興し、アメリカと並ぶほどの力をつけた。何故日本はアメリカに仕返ししないのだろう?』という意見が書かれてあったとのことだ。こういう感覚こそ、「6番目の戒としての殺すなかれ」ではないだろうかと私は思うのだ。我々は、同じ神を信じる一神教同士で殺し合う姿や、キリスト教同士でもユグノー戦争や北アイルランド紛争がごときカトリックとプロテスタントの宗教戦争に、正直納得できないものがある。それは、我々日本人の伝統的な多層文化的価値観(ジャパニーズ・スタンダード)から見ているからに他ならない。

地球市民たらんとする人間にとって、「十戒」は必要不可欠な異文化理解・学習だと思うのである。

0 件のコメント:

コメントを投稿