3年生の中間考査が全て終わって、T君が塾にやってきた。ロンドン行きを目前に控えてのSDGsの講義を行った。私は、昨日も書いたが、17の目標を知っているだけではSDGsを理解したとはいえないと思う。ターゲットに目を通すことが必要だ。でないと世界が抱えている問題が見えてこないと思っている。彼には英文と和訳の資料を手渡した。
たとえばターゲット9-2。「包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030年までに、各国の状況に応じて雇用およびGDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については、同割合を倍増させる。」
「包摂的」という語彙はSDGsによく出てくる。高校生向けに説明すると、マニファクチュア時代の熟練工は、その技術力故に力を持っていたが、工場制機械工業に進化してくと、熟練工でなくとも生産が可能になり、熟練工の地位は下がっていく。こういう事例のように、多くの人々が関わることができるようになるという意味である。
さて、このターゲットの中心的な命題は、「GDPに占める産業セクターの割合を大幅に増加させる」という一文であると思う。これは、日本の高校生には不可解な一文であると思う。開発経済学をやっていないとわからない。すなわち、産業セクターの反対語を知らないと意味不明なのである。それは、「インフォーマルセクター」である。要するに、非公式な(政府の経済統計に表れないような=税を納めることもない)その日暮らしの都市生活者の生業のことである。
私のアフリカ開発経済学の講義を聞いたことのある教え子諸君は、ケニア・ナイロビでの交差点の花売りや、タンザニアの町で服をを売り歩くマチンガと呼ばれる人々の話を思い出してほしい。SDGs9-2は、そういう非公式な生業を大幅に減らそう、正規の雇用を生み出そうと言っているわけだ。
と、こういった開発経済学の話をしていたのだった。久しぶりの濃い講義をして私自身は嬉しかった。彼が塾を去る時、海外に教え子を送り出すときの決まり文句「グッド・ラック、メイビー・ノープロブレム」を今回も贈ったのだった。T君、実りの多い旅でありますように。
2019年10月18日金曜日
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