https://globe.asahi.com/article/12076800 |
この新しい教育を実践している学校は、カリフォルニア州サンディエゴのチャータースクール(特別認可を受けて開校する公立学校)で「High teach High」といい、半導体企業のクアルコム(Qualcomm)の創業者の息子が設立資金を出して2000年開校した。学費は無料で、希望者の中から抽選で選ばれる故に、多様性が高く、また貧困層の子供も多い。(現在は幼稚園から高校まで13校と教育大学院を有している。)
https://www.hightechhigh.org/ |
より具体的には、教師(彼らの雇用形態は1年契約であるが熱意のある教師がたくさん応募してくる。)1人ひとりに、どんな授業をするか完全に任されている。教科書も試験も成績表もない。試験の代わりに開催される学期末の展示会に向けクラス単位で作品制作などのプロジェクトに取り組む。完全なPBL(Ploject Besed Learning=課題解決型学習)の学校である。
PBLは、アクティブ・ラーニングのひとつである。アクティブ・ラーニングは、文科省の定義によると、「教員による一方的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。」「発見学習・問題解決学習・体験学習・調査学習等が含まれるが、教室内でのグループディスカッション、ディベート、グループワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。」となっている。ここで述べられている「問題(課題)解決学習」がPBLであると言ってよいかと思う。この学習では、与えられた問題に、明らかな正解はない。学びのプロセスが能動的で重要な意味を持つ。
私がこれまで国際理解教育(実際には地理Bの授業)で実践した中で言うと、「私のPRSP(貧困削減文書)」のグループワークが挙げられる。課題はコートジボワールのPRSPを考えようというものだった。生徒はまず、PRSPとはいかなるものかを調べ、次にコートジボワールの地理・歴史・産業・文化などを個々に調べ、開発経済学を学び、次々に疑問がわき、さらに調べ、自分の意見を作る。それらをグループワークの中でまとめ上げていったのである。もし、私が英語が出来て、HTHの教員になることができたら、同じようなアフリカ開発経済学のPBLをやるだろうと思う。
ところで、私はアメリカの高校を5校ほど視察したことがある。ボストン(MA)・ミルウォーキー(WI)・デトロイト(MN)・ニューバーン(NC)・アーバンデール(IA)である。アメリカの教育事情は日本とはかなり違うことを認識している。まずカリキュラム(前・後期でそれぞれ数教科選択)的にも、授業時間(午前中だけの学校もあった)にもかなりゆとりがある。定教室はなく、授業担当者の教室に移動して授業を受ける。教科書もガイドラインはあるもののかなり自由度が高い。HTHのPBLの実践も、このような日本とは全く異なる教育事情を基盤としていることを記しておきたい。また、サンディエゴはカリフォルニア州最南部メキシコとの国境の街で、太平洋方面の重要な海軍基地であるとともに、前述のクアルコムを中心としたIT産業が集結しロスに次ぐ人口をもつ大都市でもあることも付記しておきたい。(私の印象では、風光明媚ないい都市である。)
さて、このHTH、州の標準テストでも平均以上の学力をキープしているし、大学進学率も98%と高い。前述のように貧困層が50%を占めていることを念頭に置くと、その学習効果を高く評価するのは当然だと思われる。この映画、私も楽しみにしている。
http://atcafe-media.com/2017/12/26/most-likely-to-succeed/
http://www.futureedu.tokyo/education-news-blog/2016/9/18/high-tech-high-3
https://globe.asahi.com/article/12076800
https://www.hightechhigh.org/
0 件のコメント:
コメントを投稿