毎日新聞の8日の「今週の本棚」に興味深い書評が載っていた。『途上国の旅:開発政策のナラティブ』(浅沼信爾・小浜裕久著/勁草書房)の白石隆氏の書評である。以下、私なりにまとめてみた。
一部の途上国経済がキャッチアップに成功し、新興国として台頭してきた。しかし経済成長は、理論が描くように、またマクロ的にはスムースに見えても、経済のプロセスでは、生産、雇用、諸国配分、地域経済、消費構造等、すべての面で大きな構造的変化が起こっている。極めて複雑な現象であり、その国の開発戦略、経済政策はその国の発達段階に応じたものでなければならない。ある政策がある国でかつて成功したからと言って、同じ政策が別の国で上手くいくとは限らない。いろいろな国での開発の経験についてナラティブ(物語)を積み上げ、なにが上手くいき、何が上手くいかないかを学ぶほかない。これが本書の狙いである。一次産品輸出は成長のエンジンにならないという一般的な理解を覆し、パームオイルとゴムの輸出をテコに経済成長を成し遂げたマレーシア、輸出主導型工業化を進めた朴政権下の韓国、かつての世界第2位の高所得国ながら輸入代替工業化で経済衰退したアルゼンチンなどの物語が語られる。これらの物語から導かれる教訓のひとつは、経済発展が急速に進展する決定的な時期があり、その時に開発の重要課題が出てくること。もうひとつは、政治指導者はしばしば短期的に、自分と自分の支持者の政治的・経済的利益を犠牲にしなければならないこと。また有能なテクノクラートに支えられるかどうか。これによって、経済発展の首尾が大いに違ってくるのだ、という。
実は今、新しいアフリカ開発のシュミレーション教材の構想を練っている。(3学期から春休みという時期、毎年のことだが…)是非とも参考にしたいと考えているところだ。
2014年2月11日火曜日
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