平野先生の図説アフリカ経済 |
日本経済とアフリカ経済の共通点は、20年にわたる成長停止だという。アフリカの場合は1961年から2002年まで。日本では1991年から2011年現在に至るまで。開発経済学は、アフリカの経済停滞の原因を探るべく、様々な論を展開して生きた。いわく「内陸国ゆえ」「金融政策のあやまり」「ガバナンスの問題」などなど。これらは、その有効性を問われるとともに、日本の経済停滞を説明できない。
そんななかで、日本にもあてはまる開発経済学の議論がある。それは「貿易開放度」である。サブ・サハラ=アフリカの貿易依存度は1980年代に40%に低落している。貿易立国と称する日本は、輸出入のGDP比は30%ほどで、アメリカ同様著しく低い。EU貿易圏では50%、中国で80%、韓国で100%、マレーシアで200%、シンガポールは300%に達する。日本経済は非常に内向きなのである。
平野論文から |
http://www.ide.go.jp/Japanese/Research/Region/Africa/Radar/20110802.html
平野論文を平面的に読むと、貿易の自由化、日本にはTPP推進が必要だと説いているように見える。世界的に見ると日本経済が内向きであることは間違いない。だからといって自由貿易によってグローバリゼーションのクレイジーな市場に翻弄されながらも競争していくのが善であるとも言い難い。貿易開放度が進むと、それだけ影響を受けやすい。格差もますます進むだろう。
サブ・サハラ=アフリカは、このところ鉱産資源の開発や地域内貿易圏などで地域差はあるものの、投資も集まり経済成長が進んでいる。「貿易開放度」とともに、いまだ実証されていないとはいえ、生産年齢人口ともからんでくるのだろう。ただ、この地域差が問題である。経済によるアフリカ再編さえ進むのではないかと私は危惧している。平和的な再編ならいいが、多くの問題を含んでいると思うのだ。だからといって、アフリカも内向きになればいいともいえない。
日本も、アフリカも、グローバリゼーションの中で、まさに経済の自由と平等という二律背反のジレンマに苦しんでいると、この論文を読んで私は感じたのだった。
この論文は、単に経済停滞が20年も続いたという共通点だけを論じた論文ではない。平野論文の結論は、こういう「開発経済学の研究蓄積が、日本経済再生に有効だ」との主張である。
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