ただこの不識塾、その辺の企業研修とは違う。スケールがでかい。後のCEO候補のためのもので、研修旅行代や書籍代も含んでいるとはいえ、参加費は1人500万円。
西田哲学の項は、また後日エントリーするとして、この不識塾の存在意義について私なりに思うところを述べていこうと思う。日本企業もグローバル化の中で海外勤務も増えているが、実際のところ、現地の企業幹部などと折衝する場合、現地の歴史・地理・文化・民族性などの無知からうまくいかない場合が多いらしい。日本では、大学の教養課程がとりあえず設定されているけれど、欧米のような学士過程でリベラルアーツを十分に学ぶということがほとんどない。戦前の旧制高校のようなデカンショ(デカルト・カント・ショーペンハウエル:西洋哲学全般と見た方がいい)で半年暮らすような教育はGHQの指導で廃止されてしまった。日本のエリート層といえど、受験の世界史・日本史を詰め込んだにすぎない。そこで、この塾を成立させた中谷氏は、多くの優秀な講師陣とともに、未来を嘱望されている幹部ビジネスマンに実学ではなく、あくまでリベラルアーツを学ぶことで、教養の土台作りを行っているわけだ。
私は、この趣旨に大いに賛同できる。この本を読みながら、いろんなことを思い出した。マレーシアでは国教のイスラム教をさらに調べた。PBTの学生にもいろいろ教えてもらい、学びを深化させた。マレーシアの政治制度(憲法)や経済についてもだいぶ調べた。何より興味深かった故だが、それはアメリカに初めて行った研修旅行でも同じで、帰国後10年間莫大に本を読み、さらに渡米して学びを深化させたし、アフリカ学もまさに同様。私はビジネスマンではないし、こういうリベラルアーツ的な学びは、すぐ授業に活かせるので実学っぽいのだが。(笑)属性のあまりなかったヨーロッパなど他の地域についても、事あるごとに深化させている。興味は、きら星のごとく尽きない。だからこそ、外国人とコミュニケーションが取ることに躊躇しない。(ただ通訳さんが必要だが…。)
昔の話になるが、JICA大阪の高校生セミナーなどの機会に、研修で来ていた多くの国の方とも、地理的な教養がものを言った。M高校英語科の生徒は、私より英語力があるのに、パラグアイやアルメニア、ラオスといった国々のことを殆ど何も知らないし、日本の紹介にも知識が少ないので会話が成立しないということに気づかされていた。これはこれで、高校生とっては大事な学びだと思う。ありがたいことに、その後様々な大学で学び、国際派に成長してくれた。企業の現地ビジネスマンが高校生同様では話にならないわけだ。
また、PBTから秋田大学の国際債資源学科の文系コース(資源政策コース)に何人かの国費・私費の留学生を送り出してきた。聞くと3回生からは全て英語での授業であるらしい。しかも政治的、経済的、法学的、開発・国際協力的、環境的など様々なコースに分かれるのだが、異文化コミュニケーション&文化人類学的分野まである。鉱山開発にあたって、現地のリベラルアーツ的な素養がなければ決してうまくいかない故だ。実際に来馬された秋田大学の先生方にも詳しくお話を聞き、そんなことを説いて勧めた経緯がある。実に面白い大学教育をしていると思うのだ。秋田大学とは、東北大震災直後秋田商業高校に出張した際にも鉱業博物館に行かせていただいたし、御縁が深い。(2011年3月19日ブログ参照)
まずは、この本の最初の感想をエントリーしてみた。またここで推薦されている本についても、さっそく1冊注文したのだった。
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