2023年5月17日水曜日

そして第12代イマーム

十二イマーム派が成立する最終段階は、「お隠れ(ガイバ)」になったイマームの「再臨」に対する信者の待望感である。「シーア派イスラーム-神話と歴史-」には、イランの小学5年生向けの教科書の内容が記されている。その概略は、第12代イマームは、第11代イマームの子で「ムハンマド」の名を授けられた。預言者ムハンマドは、イマーム(第3代)ホセインの末裔で9番目の子供は私の名前で呼ばれ、別名をマフディーであり、彼の到来をムスリムにとって果報とする、と述べている。このイマームのお隠れは、世の中の状況がイスラム世界の政府の基盤が整うまで続く。神の命令で現れるイマームを迎えるまで社会を良くするために信徒は奮闘しなければならない、というものである。

この再臨する第12代イマームは、アリー、ホセインとともにシーア派教学の三本柱を形成するほど重要で、信者の宗教生活における緊張感は、マフディー到来への期待によって持続される。マフディー到来の年は確定できないが、イスラム暦1月10日(フセイン殉死の日)というのが有力である。フセインがイエスが果たしたような罪の償い的な役割を購うという意味合いがあるようだ。

再臨は、夜明け頃、メッカのカーバ神殿で再臨すると信じられ、先立って天変地異(日食や月食)が起こるとのこと。外見は若者で、黄色のターバンを被り、羊を導く杖をもつ預言者風。だが誰一人気づかない。日が暮れると、天使ガブリエルとミカエルが降りてきて語りかけ、祝福の宣言を行う。夜が明けるまでに、真の信者313人(ムハンマドがメッカ軍と戦ったバドルの戦い参戦者数)が集合、さらにホセインと共にカルバラーの戦いで殉死した72名が加わる。さらに一説によれば、黒のターバンを唯一被ったホセインとアリーの従者12000人が随行する。人々に忠誠を求めた後、手から光が輝き出て、クルアーン48章10節を伝える。そしてカーバ神殿を破壊し再建することに取りかかる。(以前の邪悪なものを根こそぎにする。)その後、メディナに進み、アリーの都・クーファへ進む。近郊のカルバラーにも多くの人が集合する。さらに伝承によれば、この日、天から5000人の天使が下ってきて、さらに正しい人々の名を記した剣が天より下がり、神の戦いが始まる。これは、画期的な世直しの契機である反面、あくまで復活・最後の審判に至る直前の出来事である、と。

なかなか興味深い話で、これまでほとんど知らなかったシーア派理解、しいてはイスラム理解が少し進んだ気がする。最後に超重要だと思われること。十二イマーム派は、先日記したように、シャリーアの体系の最後・キャースが理性に置き換わっている。イラン革命以後、宗教指導者(ウラマー)の専制支配が続いているが、この裏付けとなるのが、ウラマーの理性への法体系的信頼であることだ。マフディー再臨まで、ウラマーが頑張っていくということなのだろう。

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