2022年7月8日金曜日

日本の給料が上がらない理由

今朝の安倍元首相のテロ事件で日本中大騒ぎであるが、詳細がよくわからないので、とりあえず以前から予定していたエントリーをしようと思う。

ある生徒の小論文対策で、政治的な課題を考えているのだが、先日市立図書館で大前研一の日本の論点の最新版を借りて読んでみた。サブタイトルは、「なぜ、ニッポンは真面目に働いても給料が上昇しないのか」である。

このサブタイトルについては巻頭言で触れられている。30年間も日本の給料は横ばい状況で、これは世界に類がない異常事態である。30年間で2倍以上になった国が数多く存在しているのに、である。OECDの国際比較では、2020年の日本の平均賃金は約437万円で加盟35カ国中22位、平均の約558万円に対し120万円少ない。ちなみに平均給与の伸びは0.4%で消費者物価指数は2.7%の伸びである。デフレだから実質的にプラスだという論は誤りである。

なぜ日本では真面目に働いても給料が上がらないのか、その理由は単純で、企業の労働生産性が低いからであると大前は結論付けている。日本の一人あたりの労働生産性は、OECD37カ国中、26位。G7では50年以上最下位である。ただし、製造業の生産性は低くない。足を引っ張っているのは、ホワイトカラーの間接業務で、総務・人事・経理・法務などの間接業務のデジタル化による生産性が向上していない。デジタル化を進め担当者1人で10人分の業務をこなせば生産性は10倍になるが、間接部門の人数は減っていない。日本の企業が本気で取り組めば、労働生産性を上げることが可能だが、9割の失業者を出したくない故に人員削減に手を付けていない。この悪循環が原因だというわけだ。

ドイツでは2000年代に「アジェンダ2010」という生産性向上に取り組み、雇用市場、賃金協定、失業保険制度、年金制度の改革を進める一方で、デジタル化で仕事を失った人々の再教育に取り組んだ。大学や大学院で再教育を受けるリカレントや新しいスキルを身につけるリスキリングを受けることで、失業しても再就職しやすくなり、雇用の流動性が高まり新しい産業が育った。このシュレーダー首相の改革がEU内でドイツがリーダーシップをとれるような経済改革が成功したからである。

とりあえず要点をまとめると以上のようになるのだが、かなり痛みを伴う改革であり、小手先の政策ではなく、各省庁の様々な政策をまとめていかねばならない。ぶっちゃけ、今の日本の政治家にはとてもやれないだろうと思うのである。

0 件のコメント:

コメントを投稿