2026年1月2日金曜日

市民宗教(Civil Religion)考

https://www.youtube.com/watch?v=H_Rp09stm7o
社会学で、世俗国家において特定の宗教が国家の正当性や統合を支えている構造を「市民宗教」と呼ぶ。「ふしぎなキリスト教」(橋爪大三郎×大澤真幸/講談社現代新書)の中で語られた内容で、私は知った。アメリカは、多数のプロテスタント教会、イギリスは英国国教会、ドイツは、ルター派とカトリック、ロシアは正教会といった感じである。

本日考察したいのは、中国のことである。中国の長い歴史の中で、後漢の太平道(道教系)の黄巾の乱、同じく五斗米道(道教系)、元と清の白蓮教(道教系)の紅巾の乱、さらに清の義和団(道教系)、拝上帝会(キリスト教系)の太平天国の乱など、王朝に反抗した宗教組織が多く出ている。よって、中国共産党政府が、宗教を弾圧するのは、マルクスの社会主義を妨げるイデオロギーとしての”宗教はアヘン”以上の意味を持っていると考えられる。特に、文化大革命時に、徹底的に仏教寺院・道教寺院、孔子廟などが破壊された。

この中で、儒教は、道徳倫理体系・社会規範の側面が強いが、宗教的要素も併せ持っているので宗教の定義では曖昧な存在であるのだが、文革時には、子が親を走資派として告発することも多く、完全に儒教的な社会規範は破壊された。文革は中国の発展を10年遅らせたと言われるが、それどころではない。中国の市民宗教は、儒教も含めて完全に葬られたのである。

では、現在の中国を支えているのは、マルクス・レーニン主義なのかというと、少なくとも人民の幸福を度外視した状況から「否」としか言えない。共産党員になるには、マルクス・レーニン主義学習は必要不可欠だろうが、現況との相違に意義を唱える共産党員は存在しない。エゴイズム丸出しの拝金主義とスターリニズム・暴力的独裁だけが残った。

昔々、初めて中国を訪れた時、日本語ガイドのKさんが”最後の紅衛兵”であることを知った。彼は、唯物弁証法の立場から、元紅衛兵の自分が日本語ガイドのような走資派的仕事についていることについて、矛盾しているが、その矛盾の存在は当然の理であると言った。なるほど、確かに弁証法的矛盾ではある。Kさんは、今頃どうしているのだろう。

こうしてみると、どんな宗教であれ、市民宗教による倫理観・社会規範のない世界は極めて住みにくいように思うのである。

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