2025年12月13日土曜日

佐藤優 哲学入門 備忘録14

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佐藤優氏の『哲学入門』(角川書店/2022年)の付箋をつけた箇所の備忘録エントリーの第14 回目。本書では、トマス・アクィナスについてかなり詳細に論じている。神学生への講義故に当然であるが、スコラ哲学と近代哲学の関係性に移りたいと思う。

近世は、ヘブライズムとヘレニズムとラティニズムの文化総合体としてあり、それが世俗化していくのが、近代のプロセスである。(P177)

…ヘブライズムは、言わずもがなユダヤ・キリスト教の一神教的伝統、ヘレニズムはギリシア古典哲学。ラティニズムは、ローマ法を指す。この一節はかなり重要なテーゼだといえる。高校の倫理では、ラティニズムについてはあまり触れない故である。

淡野氏のテキストによると、中世は、上記の3つ(宗教・学問・国家)が一時、統合統一されたが、それぞれがそれぞれ他のものの奴隷になることなく自己に固有な権威と価値を主張するところに近代的世界が始まる、とある。佐藤氏は、淡野氏のルネサンスと宗教改革が、近代の分水嶺と見ていることについて、少し古いとしている。なぜなら、この時点では、国家とコルプス・クリスチウム(キリスト共同体)が崩れていないからだ、とする。現代においては、宗教の要素が著しく薄くなり、国家をベースに動くようになった三十年戦争後の1648年が分水嶺と言われている。またポストモダン後は、歴史の時代区分は強者の欧米から見た時代区分である故に、その「物語」を拒否し、各々の小さな差異を強調していく方向になっていて、通史という考え方が希薄になっているとしている。(P177-8)

…この通史の分水嶺の記述も、実に重要だと思う。岩波講座の「世界歴史」シリーズも第二版になるとポストモダン的な内容になっているという。学院の図書館にもあると思うので、是非確認しておきたい。

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