「象が空をⅡ 不思議の果実」である。読んだことのあるようなないような…というのがチョイスした理由。美空ひばりの話で、スポットライトで可視できるホコリだらけの舞台に立つことを躊躇する話は、読んだ気がする。しかし、その他の高倉健の肖像画の話などは、始めてのような気がする。要するに、読んだのか読んでいないのかはっきりしないままである。
久しぶりに沢木の文章を読んで、私の文章力の稚拙さが再認識された。文章力は読んで読んで読んで、書いて書いて書いて(注:円広志 風)しか高みに行かない。今回の最後の解説は、沢木のようなライターに憧れ、そして夢破れTVディレクターをしている人物のものだ。ここに、沢木が横浜国大を出てすぐ、ライターとなった際、不安はなかったと言い切っていることが書かれている。私は、ちょっと感動した。私は沢木の文章が好きだが、彼の文章の良さは、語彙の豊富さとともに比喩のうまさ、そして構成力、特に最後のオチがきいていることである。当初から、沢木は、こういう能力を持っていたのだ。たしかに初期の作品から、私は文章の旨さに惹かれたと思う。この本を読んだか読んでいないのか、まだ定かではないが、文章の旨さは確かである。
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