この本は、L君にかなりおすすめ。ここで紹介されている、アンダーソンの『想像の共同体』やゲルナーの『民族とナショナリズム』などは、今彼が考えている問題意識と、その延長線上にある卒論に役立つと思う。そんなことを考えていた。
さて、この本の中で、「スコットランドの独立問題を沖縄の目で見る。」という箇所がある。2014年にスコットランドの独立に関する住民投票が行われた。日本のメディアのほとんどが、この独立運動は経済格差の問題でナショナリズムの要素はない、イギリス政府が格差是正策を約束したので、沈静化するだろうと報道したのだが、唯一「琉球新報」だけが、スコットランドの独立運動は益々加速すると予測したという。
何故か?琉球新報はイギリス側がさらに自治を認めると約束したからだという。独立に賛成した45%は自己決定権を持っていることを前提にしている。反対した55%の中には、自分はイギリス人であるというアイデンティティを持っている人だが,自分はスコットランド人であるが、現時点ではイギリスの枠内にいたほうがいいとして反対した人がいると分析。言い換えれば「将来状況が変われば、分離独立しても構わない」という人でもある。これらの人が5%以上いるとすれば、独立しうるということが可視化された、イギリス政府はこれを危険と見てさらなる自治権を認めたのだ、だからスコットランドの独立運動は失速しないと主張したのだった。その8ヶ月後、総選挙でスコットランドの59議席中56議席を独立派のスコットランド国民党が獲得、琉球新報の予測が的中したのだった。
なぜ琉球新報だけが、これを見抜けたのだろうか。佐藤優は、スコットランドと沖縄が極めてアナロジカルであるからだと主張する。スコットランドには、グラスゴー郊外にイギリス唯一の原子力潜水艦基地がある。イギリス政府としては、スコットランドが独立すると、この基地を引き取らねばならない。イングランドもウェールズも引き取りたくはない。原発は少なくとも選挙で選ばれた首長や議会の了承を得ているが、基地は強制されたものである。母親が沖縄出身である佐藤優だからこそ指摘できる分析である。沖縄問題は、実に微妙なのである。
…ところで、本日6年ぶりにRISOの輪転機を使ってプリントを印刷した。うーん、感無量。
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