2018年5月19日土曜日

中東の微妙な状況について

http://polandball.wikia.com/wiki/Iran-Israel_proxy_conflict
イスラエルが、シリア領内のイラクの革命防衛隊からロケット攻撃を受けたとして、これに対し大規模な空爆を行った。この件について、私が最も信頼する現地発の「オリーブ山だより」は沈黙を守ったままであるので、他のWEB記事を紹介・要約したい。「イスラエルのシリア空爆とロシアの役割」である。
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/12849

シリア内戦において、アサド側につき、共同戦線をはってきたのが、ロシアとイランである。アサド政権は独力で内戦を終結にはもっていけない。ロシアの軍事プレゼンスが不可欠なのだが、ロシアは東ウクライナにすでに陸上兵力を展開するという状況を作っており、財政上も国民感情の上からも、空軍はまだしも、シリアに陸上兵力を展開することは難しい。したがって、陸上兵力の主力であるイランの協力は不可欠である。

一方で、ロシアはイスラエルとの関係は悪くない。イスラエルがイランへの脅威を持っていることには理解を示しているし、石油価格面で底支えを共にしているサウジアラビアが、イスラエルよりもイランに敵対している関係で、イラン一辺倒の姿勢をとるわけにはいかないようだ。ロシアは極めて複雑な中東外交を迫られているといえる。

イスラエルのシリア空爆の前日は、ロシアの対独戦勝記念日で大規模な軍事パレードを行った。メインゲストは、なんとネタニヤフだったのだという。プーチンも多くの時間をこのイスラエル首相と過ごしたと伝えられ、翌日の空爆について突っ込んだ協議が行われた可能性が高い。ロシアは空爆を容認し、この情報はシリアとイランには伝えていないようで、ロシアの対空防衛システムも作動しなかった。

ロシアにイスラエルとイランの仲裁役を期待する声もあるが、かなり難しい。現在、アメリカがイラン核合意から離脱、経済制裁を再開し、大使館の移転など完全にイスラエル側についている中で、シリアやサウジとの関係も考えながら、ロシアも悩むところだろう。

…ところで、以前、イスラエルがスーダンに空爆を行ったことがある。(2012年10月)この時、単にスーダンの軍事工場(イランが、ここでガザに送る弾道ミサイルを製造していたらしいと英紙が報道)を破壊するだけではなく、F15が発進したイスラエル南部の基地から、スーダンのハルツームまでとイラン中部までの距離がほぼ同じであることから、イラン攻撃(特に核施設)の可能性を示唆したものという報道がなされたことがある。おそらく、イスラエルには、すでに十分なシミレーションが出来ていると思われる。イスラエルはそういう国だし、自己防衛のためには、あらゆる手段をとるだろう。

…一方で、自国のシェール革命で、中東の石油に価値を見いださなくなったアメリカは、中間選挙での得票増というミクロな利益のために、中東に於ける様々な先人のマクロな労苦を次々と消し去っているようだ。先日も国務省の重要な位置を占める有能な官僚が、イラン合意離脱後に辞任した。12点男の元から、どんどんと優秀な頭脳が去っているのだ。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/05/post-10195.php

…第五次中東戦争は起こるのか?正直なところ、確率は低いと思うが、ありえない話ではないと私は思う。最近の国際状況は、理性や理念という物差しで測れないからだ。

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