2017年12月28日木曜日

「龍馬の黒幕」を読む。

先日、例の日本人会の無人古本コーナーで「龍馬の黒幕(加治将一著/祥伝社文庫)」を手に入れた。ちょうど、明治維新のパワーポイントを作っていたところだったし、「石の扉」を書いた著者故に、フリーメーソンであるグラバーの話が出てくると踏んで購入した。この本の評価は難しい。ただし、幕末・明治維新史における裏面史として信憑性はある、と思う。

当時の下級武士たち、(龍馬や伊藤、初期の西郷も含めてであるが)は藩の諜報部員であったという前提は十分納得がいく。幕末初期には江戸の道場を舞台に様々な各藩の情報を得ていたことは容易に想像が付く。それがさらに重要度を増し、複雑に絡み合うわけだ。下級武士なら、失敗をしでかした時、容易に処分できるというのもよくわかる。これは事実だと私も思う。やがて、情報を握りこれを上級武士(たとえば小松帯刀のような)の後ろ盾を得て下級武士も力を持っていった、というのもよくわかる。

本書では、同時に薩英戦争での五代友厚・寺島宗則、四ヶ国艦隊砲撃と伊藤博文・井上馨、さらに土佐の長崎の英国水夫殺害事件での龍馬と後藤象二郎など、イギリスがいかに倒幕のために、彼ら諜報員の武士を利用したかが語られる。英国公館自体は英国議会の建前もあって中立をことさら強調しつつ、アーネスト・サトウやグラバーの武力倒幕派は、裏の働きをして薩摩・長州・土佐などの雄藩に工作し、弱藩には戦艦を見せびらかしながら服従を迫っていく。奥州同盟など戊辰戦争で戦った藩は、この戦艦の姿を見ていない内陸藩であるというのも、納得がいく。新政府の後ろに英軍ありきであったわけだ。この辺も納得がいく。長州ファイブや薩摩の19人の英国留学も、そういう意図から理解できる。フリーメーソンの力も十分働いたと思われる。

核心となる龍馬暗殺の謎解きも、ありえる話ではある。私は、武力倒幕を推し進める方針を決定し、大政奉還を良く思わない、薩摩も可能性があると思っていたし、薩摩に与して大政奉還路線を捨てた土佐も可能性があると思っていた。ただし、やはり可能性だ。

一応の幕末維新史をカバーしていないと読み切れない部分もあり、結局のところ、評価の難しい本というのが結論である。でも面白かったし、一気に読んでしまった。

0 件のコメント:

コメントを投稿