2017年12月23日土曜日

日経 モンバサの日中競調

モンバサ港 コンテナ埠頭
http://toyokeizai.net/
articles/-/15669
久しぶりに日経を読んでいたら、面白いコラムがあった。21日のオピニオンのページにある中外時評、飯野上級論説委員の「日中、援助競争より競調を」である。

ケニアのモンバサ港は東アフリカ最大の港で、ケニアはもちろん、ウガンダ・ブルンジ・南スーダンといった内陸国の海の出口である。2016年のコンテナ取扱量は109万TEU(20フィートのコンテナ換算)、日本の博多港(国内第6位)に匹敵する。2002年と比較すると3.6倍にも伸びている。日本政府は10年ほど前から同港の整備を手伝っている。267億円の円借款で第一期工事を2016年に完了、321億円の円借款による2021年をめどにした第二期工事計画も動き題している。完成すれば、コンテナの取り扱いは大阪港(国内第5位)に迫る。港周辺の道路や隣接の工業団地の開発も支援している。

はからずも、というべきだろう。(飯野氏の表現)中国もケニアを軸にインフラの整備に努めている。モンバサ=ナイロビ間を結ぶマダラ高速鉄道で、今年5月に完工した総工費38億ドル、その9割を中国輸出銀行が融資し、建設を請け負ったのは中国企業着工から3年ほどで完成させた。中国はナイロビからさらに西に延ばし内陸の国にもつなげたい考えで、本格的な貨物輸送はまだ始まっていないが、日本の援助関係者は「港と鉄道が大きな相乗効果を発揮する可能性はある。」と期待を隠さない。

一方で相乗効果の実現に向けた話合いを日中の間で持ったことはないそうで、相互不信が読み取れる。インドネシア・ジャワ島の高速鉄道建設を土壇場で中国に取られたのが2年前である。またスリランカのハンバントタ港は中国の援助で整備されたが返済に行く詰まり、中国の国営企業に売りわたされ、潜水艦も入港したことがあり軍事利用かという懸念まで浮上している。

こうした事態を避ける上でも、日本が助言をしたり、中国とインフラ輸出を競うことは意味がある。このモンバサ港と鉄道も、競争ではなく協調すれば当事国、さらには東アフリカの内陸国にとって大きな利益となるはずである。もっと大きく言えば、中国の一帯一路構想と、日米の自由で開かれたインド太平洋戦略が「競調」が問われている。

…モンバサは、私たちがJICAの教師研修で2003年にケニアを訪れながら、テロ事件があったために行けなかった都市である。おそらく行けていたら、この港の開発状況を視察していたに違いない。中国のアフリカ進出への危惧が叫ばれて久しいが、こういう「競調」という視点があることを確認しておきたいと思い、エントリーした次第。問題は日中のメンツや利益ではなく、アフリカ諸国の持続可能な開発なのである。

追記:このモンバサ港の工事施行に関わっていた日本人社員が強盗に襲われ死去されたらしい。(記事は12月23日付けだが、7月15日の日中の話らしい。)モンバサの治安は、特にソマリアの影響もあって未だに回復されていないようだ。こうしてマレーシアにいると、海外駐在員の方とも接する機会がある。マレーシアの治安はすこぶる良いが、決して人ごとではない。ご冥福を心から祈りたい。
http://toyokeizai.net/articles/-/15669

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