2017年8月5日土曜日

長州のバーバリズム

妻が今日、帰馬するのだが、台風かなにかの関係で2時間以上遅延して飛び立つようだ。空港に迎えに行く予定だが、少し時間があるのでブログのエントリーをしておこうと思う。

先日、日本人会の無人古本コーナーで、「日本の歴代総理大臣がわかる本」(岩見隆夫著・三笠書房)をRM1で手に入れた。私は、長い教員生活の中で教材研究として戸川猪佐武の「小説吉田学校」シリーズや大下英治の政治小説などをかなり読み込んだ。この系統の本は、新しい知識を得ると言うよりは、マンガ本的に比較的楽に読める本である。ちょっと気が向いたときに開く程度なのだが、昨日、岸信介の項で、「バーバリズム」という聞き慣れない語句が出てきた。

鳩山内閣の外相・重光葵と共に米国の国務長官ダレスに会った時に、重光が「安保条約は不平等だ。」と唐突に言った。するとダレスに「日本にそんな力があるのかっ!」と一括されたらしい。この時に岸は安保改定を強く意識することになる。
岸側近の福家俊一は、「吉田松陰、高杉晋作らの長州のバーバリズムと共通したものがにおう。」と言ったそうだ。

バーバリズムとは調べてみると「野蛮」を意味する語らしい。福家俊一のいう吉田松陰のバーバリズムとは、無謀な黒船への密航や「狂」を松下村塾で説き、尊皇攘夷の過激派育成を意味するのだろう。また高杉晋作は長州を倒幕武闘路線へ導き、奇兵隊の育成、功山寺でのクーデターなど、吉田松陰の志を引き継ぎ、見事に「野蛮」な生涯を送ったといえるだろう。

長州からは、数多くの首相が出ている。長州にはそういうバーバリズムのDNAがあるのかもしれない。ケンカ好きのDNAとでも言おうか。伊藤博文などは、例外的で、松下村塾でありながら周旋の才を認められていたりして、「野蛮さ」に欠けるかもしれない。日露戦争も回避派だったし。(笑)山縣有朋は、ずばりケンカ上手だったと思う。国民皆兵を(薩摩の久光を怒らせるのを覚悟で)西郷にもちかけるところなど、一身を賭した大ゲンカをしかけている。

岸の実弟で長期政権だった人事の佐藤栄作も最後の最後で新聞と大げんかになる。(小学生だった私はこのニュースをTVで見ていて強烈な記憶が残っている。)今の首相も、野党に対して、いらいらしてヤジを飛ばすところなどを見ると、このDNAをもっているような気がする。首相は、岸首相の孫(母方の祖父)に当たるが、ハト派的な父親の系譜(三世議員である。)を誇りにしているらしいと何かで読んだが、簡単に長州のバーバリズムという一言で「人間」を語れるわけではない。いずれにせよ、バーバリズム…なかなか興味深い語彙が増えたわけだ。

0 件のコメント:

コメントを投稿