2016年7月19日火曜日

IBTの話(18) パレスチナ問題

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総合科目の授業はパレスチナ問題に突入した。華人の私費生は、日本の生徒同様、全くの第三者なので、白紙からこの問題を学ぶことになるが、国費生のマレー系の生徒にとっては、ユダヤ人は(非日常的な存在でありながらも)同じ啓典の民であり、同じイスラム教徒であるパレスチナ=アラブ人の敵でもあるわけで、イスラエルは悪の国というイメージが強い。

これまで、日本ではパレスチナ問題はだいたい3学期。時間がなくて軽く済ましてきた感があるのだが、そういう意味もあって、IBTでは極めて真正面から講じてみた。

すると、どうしてもイギリスの存在が浮かび上がってくる。イギリスは、WWⅠ後、アラブの名門ハシム家のアラブ統一をフランスとともに阻みながら、結局細々と分割し力をそいでいく。一方で大いにシオニストをパレスチナに迎えいれている。そういうわけで、パレスチナの人口比率がかなり変化していく。ユダヤ人が1/10から3/10へ。さらに、独自の国作りも進めていく。これは、実はマレーシアでは理解しやすい。マレーシアでは、6割がマレー系、3割が華人、1割がインド系だからだ。たとえば、インド系の人々が、自分たちだけで警察組織をつくりインド人街を守るようになったら、どう?などとかなりリアルな問いかけにはなるが、イメージしやすいのである。

中東戦争についても詳細に論じた。国連のパレスチナ分割案の賛成国、反対国、棄権国。それぞれ何故そういう結論を出したのだろうという発問をしてみる。かなりの難問ではあるが、考えさせることが国際関係の学習として重要だと思う。ソ連は何故賛成?リベリアは何故賛成?キューバは何故反対?ユーゴスラビアの棄権、中華民国の棄権、さらにエチオピアの棄権は何故?なかなか盛り上がったのだった。とりあえず、今日で両クラスとも第4次中東戦争の終了時までいった。

と、全力でパレスチナ問題について語ったので、今日は軽い疲労感がある。ところで、国費生のクラスでは、今回のトルコのクーデターについての質問も出た。少し、みんなで考え、意見もいろいろ出たのだが、基本的に彼らはトルコのイスラム化を是と考えているようである。トルコ的な政教分離政策には違和感を持っているようだ。結局のところ、このトルコの話もパレスチナの話も、国民国家論に帰着するのである。これは、全員とはいかないが、多くの生徒が理解してくれているようだ。

これまで、こういう思索を伴う社会科をあまり経験していない彼らに、時間があれば本来の社会科学的な学びの世界に、是非とも招待したいと思うところだ。それも日本に留学する彼らを応援する私の役目かなと思っている。

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