2015年12月4日金曜日

講談社現代新書 鄧小平を読む。

日経の広告で、講談社現代新書の鄧小平(エズラ・F・ヴォーゲル:聞き手=橋爪大三郎/本年11月20日発行)が好評らしいことを知った。さっそく読んでみたのだが、評判通りに面白かった。この新書は、そもそも日中の研究者であるエズラ・F・ヴォーゲル教授(社会学者)の「鄧小平」という本編があり、それは英語版でも中国語版(本土・香港・台湾で発行されている。)でもベストセラーになったものであるらしい。もちろん日本語版もあるという。これを受けて、橋本氏がインタヴューしたものであるので、本編のエキスがうまくピックアップされているといえる。

特に興味深かったのは、鄧小平と毛沢東の関係である。最近は、中国現代史を授業で講ずることもめっきりなくなってしまったが、鄧小平は何度も失脚する。その度に復活して市場経済で中国を発展させる。鄧小平は、なぜ復活し得たのか?この新書は、それに答えてくれる。

中国現代史で、毛沢東が、「紅」に走り、「大躍進政策」を発動し、大パニックを起こした際、彭徳懐が毛沢東を批判するのだが、毛沢東は反対に彭徳懐を失脚させる。この会議に、鄧小平は足を怪我したということで欠席しているのだった。この仮病を使ったことが鄧小平の鄧小平たる所以である。

この辺の細かいことは資料にないが、鄧小平は、彭徳懐の意見は正しいと思っていたらしく、人民公社の調整政策をまとめている。毛沢東は、大躍進の失敗を認めていたようで、この調整制作には不満ながらもノーとは言わなかった。ただ、正面切って自分を批判した彭徳懐はゆるさなかった。鄧小平は、毛沢東がいう事には絶対反対しないという、中国共産党のテーゼを守りぬく。ここが、彭徳懐と鄧小平の相違である。

文化大革命後、毛沢東の後継者となった華国鋒は、二つのすべて「毛沢東の決定、指示はすべてその通りに実行しなければならない。」を掲げた。その時代に改革開放を進める際にも、鄧小平は、「実事求是」(現実が真理を判断する基準になる)という、コトバを毛沢東の著作から引っ張ってきて、これを打ち出している。毛沢東の一番根本的なことは、新しいことを実験しよう、それが毛沢東の精神だと。新しい実験をやる中で、毛沢東と違ったことをやってみる。毛沢東が生きていたら、きっとこれを許すだろう。これはうまい。(ヴォーゲル教授談)

鄧小平のしたたかさ。確かに尋常ではない。

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