2015年12月20日日曜日

毎日 ロシア正教のスタンス

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毎日の国際面に、「我々は、西側のよそ者が書いた処方箋で生きるよう強要されてきた。」という、ロシア正教のスポークスマン的存在チャプリン神父の発言が載っていた。旧ソ連・ペレストロイカから30年という特集の第4回目、「政権を支える(ロシア)正教会」という記事である。発言の場は、親政権派のシンクタンクが開いた「西側諸国が展開する反露プロパガンダといかに戦うか」というシンポジウムである。彼は「イスラエルは反ユダヤ主義を絶対に許さない。反露主義者は背徳者であり、ロシア政府が厳しく罰するべきだ。」とも語った。9月末に、プーチン氏がシリア空爆に踏み切った際、ロシア正教トップのキリル総主教は「責任ある決断をした。」と述べ、祝福した。9000万人の国内外の信者をかかえているロシア正教は、プーチン政権を強く支えているわけだ。

日本では、この正教会(オーソドックス)のことはあまり認知されていない。基礎的なことを羅列すると、東ローマ帝国のキリスト教会が民族ごとに独立した教会である。ギリシア正教会やセルビア正教会というふうになり、ローマ=カトリックのように、唯一のイエスの一番弟子ペテロの後継者としての法皇(教皇)は認めないし、各民族教会は独立している。またローマ=カトリックと異なり、神の偶像(彫刻)は認めないが、絵画(イコン)は認められる。細かい話になるが、十字をきるのも順番が逆になる。ローマ=カトリックがラテン語と中世の共通語をもち、ヒエラルヒーをもった教会組織があって、西ヨーロッパの統合のベクトルを受け持ったのに対し、民族ごとに独立したオーソドックスでは、そういうベクトルは薄い。

ロシアは、もちろんヨーロッパの国の1つだが、西側(と呼ぶより、文化的・経済的先進地域だった西ヨーロッパ)に、押され、時に侵略されてきた。気候が厳しいという事情もあるし、オリエントな風土(ギリシア・ローマの民主制ではなく専制君主制に馴染んできた。)もある。その基盤において異質な大国なのである。ナポレオンにも、ヒトラーにも(結局は勝利したとはいえ)莫大な人的損害を受けた。ロシアでは、WWⅡを大祖国戦争と呼ぶ。先日読んだ、「チェルノブイリの祈り」の中でも、この時の戦争の記憶がいかに鮮明で、ロシアの人民にとって一大事であったかが、意外な程書かれていた。

『西側のよそ者が書いた処方箋』とは、西側との比較(民主主義・資本主義の進み具合を基準において)でロシアを理解するというコトであるだろう。この処方箋から見れば、ロシアは民主化にも、資本主義の深化においても今だ多くの問題が残されている。こういうロシアの反露主義に対する(プライドとコンプレックスが入り混じった)意識は、我々も十分理解しておくべきだとあらためて思うのだ。

ところで、同じ国際面に、ドイツ政府が18日までに、フェイスブックやGoogleと、ヘイトスピーチなどドイツで違法とされている書き込みの(可能な限りの)24時間以内の削除について合意したという記事が掲載されていた。気づいた利用者が報告できる仕組みを確保するらしい。WWⅡにおけるデマゴーグやプロパガンダへの反省からくるドイツの姿勢は、当然かもしれない。

このロシアとドイツの、国家というもの、民族というものに対する姿勢の大きな差異は、長い歴史的な背景を抱えているわけだ。世界史を学ぶ意義は、まさにこういう各国の理解の基盤となるところだろう。

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