昨日の毎日新聞に、驚くべき記事が載っていた。「異論反論」という佐藤優氏の寄稿記事である。今回の尖閣諸島の問題に関して、日本政府は「領土問題は存在しない」という立場を取っている(外務相HPにそう書いてある。)わけだが、佐藤優氏が尖閣諸島関連の外交文書を精査してみると、「領土問題は存在しない」という主張と明らかに齟齬をきたす外交文書があることに気付いたのだという。以下、新聞からの抜き書き。
それは、日中両国が相互の排他的経済水域(EEZ:領海12カイリを除く沿岸から200カイリの水域)の漁業について定めた日中漁業協定(正式名称:漁業に関する日本国と中華人民共和国との間の協定)である。この協定は97年11月11日に東京で署名され、98年4月国会で承認、00年6月1日に効力が発生している。この協定第6条(b)に、『北緯27度以南の東海の協定水域(中国の排他的経済水域を除く)』と記されている。尖閣諸島が含まれる水域である。協定本文には、この水域に関する規則は何も定められていない。ただし、この条約が署名された日に、小渕外相(当時)が徐中国大使(当時)に「日本国政府は、日中両国が同協定第6条(b)の水域における海洋生物資源の維持が過度の開発によって脅かされないことを確保するために協力関係にあることを前提として、中国国民に対して、当該水域において、漁業に関する自国の関係法令を適用しないとの意向を有している。」という書簡を送っている。従って、日本は尖閣諸島周辺のEEZで操業する中国漁船を取り締まることができないのである。同日付で徐大使から小渕外相に宛て、中国政府が当該地域で日本国民に対して中国の漁業関連法令を適用しないという書簡を送っている。これを「外交上の相互主義なので問題ない」と強弁することはできない。尖閣諸島を実効支配している日本政府が自国のEEZにおける施政権の一部を中国に対して放棄する意向を示す外交文書を発出したことは、外交的に大きな譲歩であり、領土問題をめぐる係争の存在を認めることになる。
外交のプロ佐藤優氏の寄稿記事である。少なくとも「領土問題などない」という強弁は避け、係争を認めたうえで、問題解決まで尖閣諸島への上陸を自粛するなどの合意を取り付け武力衝突の危機。を避けることに全力を尽くすべきだと記されている。
…要するに、尖閣諸島近くの海域では日中共に仲良く漁業しましょうという協定があったわけだ。しかもお互いに自国の法令を強要しないという書簡を交換していたのである。と、なればあの海上保安庁の巡視船と漁船の問題はどうなるのか?うーん。今、言えるのは、ナショナリズムを高揚させる愛国正義の論調に無批判に乗ることは危険だということ。むろん、中国の愛国無罪よりはマシかもしれないが…。
追記:本日ある情報筋から前任校の2年生の中国修学旅行が中止になり、国内旅行に変更になったということを知った。うーん、残念である。王さん、劉さんはさぞや残念だと思う。もし私が担当でも、やむをえなかったかもしれない。あの天安門広場を制服で歩くというのは、今やかなり危険であるらしい。(中国の中高生は制服自体がジャージであるので、日本人だとすぐ分かるし、ものすごく目立つのである。)極めて遺憾である。非常に残念である。
2012年9月27日木曜日
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