2011年4月21日木曜日

ODA削減に異議あり

昨日、毎日新聞の社説「復興財源 ODA削減は再考を」を読んだ。私は完全に同意したい。毎日新聞の社説の要旨は、およそ次のようなものである。
政府・民主党は、大震災の復興に向けた第一次補正予算の財源に充てるため、ODA(政府開発援助)を500億円削減する方針である。だが、ODAは、日本の国際社会での存在感を高める極めて重要な手段である。震災後の日本の振る舞いに世界の耳目が集まっている現在、対外支援を減らさないことが震災に負けない姿勢と平和と繁栄に非軍事的な貢献を行うというメッセージになる。今回の震災で途上国からも支援が寄せられたのは、その日本への恩返しという側面もある。日本のODAは以前世界一の規模だったが縮小を続けている。日本人は国際貢献への関心を失い、内向き志向が強まっているのではないか。無償援助の対象上位国は紛争や災害で困窮にあえぐアジア・アフリカ・中東の国々で、中国ではない。今こそ、日本はどういう国なのかということを世界に発信することが、長い目で見た国益につながるはずである。
http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20110420k0000m070161000c.html

今回も大本営の、「国家戦略のなさ」・「短慮」が、見え見えである。日本はいかなる国であるべきか。私は、日本がアジアを牛耳ろうとしている覇権国家の道を走っているとは思えない。日本は人材しか資源のない国である。たゆまぬ努力で技術力を確保し、丁寧な仕事で高度な加工貿易で生き延びてきた。そういう意味の尊敬を世界から集めているといえるだろう。一方で、欧米や中国のような国益をむき出しにした外交は控え、優柔不断に見えつつも、集団主義と独自のネゴシエーション民主主義の伝統をもち、それなりの「美学」をもつ国であったはずだ。

今回の大震災で経済的な打撃を受けたこと、財政赤字の問題、それらの経済的な苦境も理解しうるが、ここで、ODAを削減するというというのは、社説にあるように、「長い目で見た国益に反する。」ことは間違いない。それは、国際的な日本の「美学」を失うことでもある。

注:このODAについては、実は悪しきガバナンスの国には決して有為ではないことを理解しつつ、あえてこの毎日新聞社説に同意したい。日本のODAは、それなりに悪しきガバナンスの国には分別をもって対処しているようであるが…。(1月31日付ブログの赤道ギニアの例を参照)

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