さて、その中国である。「メディアが報じない 戦争のリアル」(小川和久/SH新書)には、その中国・台湾問題のリアルが第2章になっている。副題は、軍事的合理性のない「台湾有事論」に踊らされるな、である。日本には、科学的な視点=軍事に関する常識がかけていると著者は指摘する。
具体的には、中国軍が台湾本島を攻めて侵略するとした場合の「着上陸作戦」(上陸作戦+空挺部隊の侵攻故こう呼ぶらしい。)の考察である。支援作戦として、サイバー攻撃による台湾防衛体制の撹乱、情報組織による国内での騒乱、上陸地点への特殊部隊による攻撃も行われる可能性が高いのだが、そもそも着上陸作戦は、兵員や武器、弾薬、燃料、食料などの準備、戦闘艦艇・輸送船・上陸用艦艇の調達、物資や武器の積載や兵員の乗船、出航から上陸までの海上輸送、現地の海岸や港湾での上陸と荷揚げといった条件をすべて満たす必要がある。どれが欠けても成功しない。
実現可能性を考えると、第1に中国の海上輸送能力に問題がある。台湾の総兵力は海兵隊1万を含む陸軍10万人、海軍250隻・20.5万t、空軍作戦機520機(令和3年防衛白書)今は徴兵制はなくなっているが48時間以内に200万人の予備役が投入できる。軍事の常識では、攻める側は守る側の3倍以上の兵力が必要であるので、台湾軍の反撃で損害が出ることを前提に上陸作戦を成功させるには、中国軍はざっと100万人規模の陸上兵力が必要という計算になる。
こういう場合、重量トンではなく、容積トン(1容積トンは約1.13㎥)で計算するのが世界共通で、人間1人は4容積トン、重量40トンの戦車は90容積トンとなる。100万人規模の兵力で計算すると、3000万から5000万トンという膨大なものになる。これは中国の保有する商船の6200万総トン(2020年末統計)の大半を振り向ける必要があることになる。
しかも、優れた対艦戦闘能力を持つ台湾軍と自国の国益のために米軍が攻撃したとして、約半数が洋上で撃破されることになる。
…なるほど。冷静に計算すると、台湾侵攻は「物語」でしかないわけだ。最近は、こういう「物語」が多すぎて、政治不信・マスコミ不信が強くなっている。…つづく。
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