2018年1月6日土曜日

バッタを倒しにアフリカへ

以前アマゾンで注文し、昨年11月の一時帰国の際手に入れた「バッタを倒しにアフリカへ」を読み終えた。市井の自称アフリカ研究家としては、サバクトビバッタによる虫害で西アフリカを中心にえげつない被害が出ていることは知っている。この本はその研究に行った人物の本だとタイトルだけでわかった。ただ、本のカバーに緑の服を着た不真面目そうな(実はそうではいのだが…)著者の写真が載っていて、手にとってからなんとなく読むのが後回しになっていたのだった。

この本は昨年5月発行で、今やベストセラーになっているそうで、いまさらの書評になってしまうが、著者の筆はディティールに凝っているというのが第一の感想。面白い表現が多い。第9章の表題、「我サハラに死せず」などは、「サハラに死す」という上温湯隆氏の有名な本のタイトルを見事に逆手に取っている。こういうちょっとした表現が、これまでのエッセイ風アフリカ本(「アフリカにょろり旅」や「モザンビークの青い空」など)との差異であると思う。

ポスドク(博士課程を終了した研究者)の悲哀がこの本の主軸だ。我が息子もそうだし、マレーシアに来て大学に勤める研究者の方も何人か知遇を得たので、このあたりの状況説明には属性がある。研究者の道はたしかに険しい。

だが、著者はモーリタニアでも実に良い人々に恵まれている。バッタ研究所の所長もそうだし、日本大使館の方々。さらに無収入になってから支援の手をさしのべてくれた日本の方々もそうである。中でも白眉プロジェクトでの京大総長の面接のシーンは圧巻だ。「過酷な環境の中で生活し、研究するのは本当に困難なことだと思います。私は一人の人間として、あなたに感謝します。」と言われるのだ。

この当時の京大総長は調べてみたら、松本紘氏である。宇宙科学・宇宙電波工学がご専門の凄い方だ。私にも縁がある奈良女子大付属高校(現在は中等教育学校)のご出身でもあった。やはり、超一流の人物の言葉は深さが違う。

このシーンを、私は通勤時、バスがミッドバレーに着く手前で読んでいた。突然涙が出そうになった。マレーシアは、モーリタニアと比べ、100倍も1000倍も生活が楽だと思う。だが、この言葉をまるで自分にもいただいたような気がしたのである。思い上がりだとは思うが、海外で生活することには、たとえ中進国マレーシアであるといえどそれなりの苦労もある。志をもって海外で生きていることに対するありがたい言葉として、心に響いたのだった。

この本の中にあるアフリカ・モーリタニアの話は貴重なものなので、備忘録的に後述したいと思う。

0 件のコメント:

コメントを投稿