2018年1月14日日曜日

センター試験 ムーミン問題考察

昨年度で、センター試験とは縁が切れたと思っていたのだが、地理Bでムーミンが出題されたというニュースが出たので、問題を見てみた。第5問で北欧の地誌を問う問題である。

この問題に対して、受験生からSNS上で個人的な批判が出ている、ということだが、このことを私なりに考察してみた。

実は、地理Bを選択する生徒は、理系志望が多いのである。地歴3科目の中で最も理系に向いているのは、地理Bなのである。自然地理などは、かなり理系的であるし、グラフや統計資料を読解する能力も問われる。地名さえ暗記できれば、後はそういう能力がモノを言う。

ただし、地誌はそうはいかない。北欧、フィンランドとくれば、私は「ムーミン」と「サンタクロース」の故郷の森と湖の国、ノキアなどの携帯電話でも有名、教育立国、ロシアとは歴史的に対立している、などど次々出てくる。地誌を教えるのには、「属性」が大切である。生徒個人との関わり、それを地理の教師は掘り起こしていかねばならない。イギリスの湖水地方に本当に「機関車トーマス」が走っているとか、「フランダースの犬」のフランダースは、フランドル地方のことだとか。(但し、完全なフィクションなのでフランドルに行っても現地の人は全く知らない。)アニメの話題に触れることは、非知的でも非生産的でもなんでもない。重要な属性の発掘作業なのである。おそらく、私の地理Bの講義を受けたOB・OGなら、このムーミン問題を見て間違いなく「やったーっ。秒殺問題!」と思ったはずだ。文句を言っている生徒は、そういう授業を受けれなかったにすぎない。

センター試験の出題範囲を全て教えることは、いかなるプロでも不可能に近い。教えてもらっていないこと自体は、理不尽でも何でもなく、自然なこと、普通のことである。

理系の人々は、答えが1つであると信じている。数学や理科などの自然科学の教科は答えが1つでなければならない。それは当然だ。しかし往々にして、社会科学や人文においても、そうだと勘違いすることがある。英文の和訳も正解はひとつではない。この理系と文系の違いを知ることは極めて重要で、それを補うのが教養というものである。受験はまさに、1点2点の差が人生を決定する。故に不満も大きいことは理解できる。だが、こういう考え方もあるのだよ、ということを指摘しておきたいと思う。

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