2016年9月29日木曜日

大森実「人物現代史」を再読す。

昔、教師になりたての頃、大森実の「人物現代史」を全巻揃えて読んだ。研修費ということで図書券が配布されていた良き時代の話だ。この人物現代史シリーズは、大学を出たての私には酷く難解な本だった。だが、とにかく通読したのを覚えている。偉大なジャーナリスト大森実氏の念密な調査・研究の集大成である。第一巻はヒトラー。その後、ムッソリーニ、スターリン、チャーチル、F・ルーズベルトと続いていく。(画像参照)

今年の3月末、日本を出ることになった私の膨大な蔵書が、息子のこれまた膨大な書籍の里帰りと重なって、自宅の本の置き場がなくなった。結局私の蔵書のほとんどが破棄されることになった。マレーシアに持ってこれるような量ではないので、泣く泣く妻の提言に従ったのだ。この人物現代史も、破棄の中に入っていた。その後、中古の文庫本でとりあえず3冊をアマゾンで取寄せ、妻の来馬の前、妻の荷物と共に8月初旬に送ってもらった。どうしてももう一度読みたかったのである。

改めて、「ヒトラー」を読んでいると、物凄くよく解る。35年の教材研究の歳月が、この詳細なドキュメンタリーの行間をほとんど埋めていることを発見した。本当に良い本は、再読・再再読に十分耐え得る。近年、池上彰が現代史モノを極めてわかりやすく説いているが、やはり私はそれだけで十分満足するような学生はダメだと思っている。現代史を理解するうえで最初に読むべしは、この大森実だ、と思う。十分わからなくても通読してみる。そこから疑問や新たな興味が湧き出でてきてこそ、本当のの「知」になりうる。古い本だが、今なお輝きを持っている。そういう意味でも、私は良い時代を生きてきた、と思う。現代史を学ぶには「壁」としての大森実しかいなかった。そして池上彰はいなかったからだ。

…ひどく大上段なハナシになってしまった。再読の中で、印象に残ったことなど、またエントリーしてみようかと思う。

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