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西水氏は、政治が貧困問題に焦点を当てるようになったのはいいことであるが、しばしば「人ごと」という視点になっていないか、という「無意識の怖さ」をブータン国王・雷龍王5世の「貧困は目に見えない」という言葉をからめて説いている。
数年前、某政治家に日本に貧困などあるのか聞かれ仰天したことがあるという。絶対貧困(1日$1.25以下で暮らす人々)を念頭においての発言で、(日本でも)自動販売機に残るつり銭を探し回るホームレスの人を見たことはないのかと反問した。そういえば…、と恥じる彼のつぶやきに対し、ブータン国王のコトバ(貧困は目に見えない)を思い出したという。ブータン国王(当時皇太子)に、自分(西水氏)も貧困解消を使命とする世銀で働きながら見えない頃があったと白状し、話し込んだことがあるという。パキスタン・カシミールの貧村に滞在(以前私も読んだことがある西水氏の「国をつくる仕事」に詳しい。)し、世話になったアマ(母親)に「博士号は役立たず」と朗らかに笑われ、逆境を生き抜く英知と、真心に触れ両眼が開いた(貧民を見下していた自分を発見した)という。無意識は怖いと氏は主張する。
絶対的貧困でさえ「見えない」のなら、相対的貧困層はなおさらである。昨年公表された「国民生活基盤調査」によると年122万円未満の世帯が日本の相対的貧困層となり、その割合は16%を超え、先進国の中では最悪に近い。6人に1人が、その他の5人の目に見えないのならば広がり続ける格差社会を逆転させるべき政策が問題の本質を見落としていないか、心配になる、と。
雷龍王5世は、7年前の戴冠式で、国民に向けこう言い切った。「王としてあなたたちを支配するつもちは毛頭ない。あなたたちを親として守り、兄として慈しみ、そしてあなたたちの息子として仕える。」と。その背景には、皇太子時代から全国各地の草の根で会った国民一人ひとりの顔がある。国王の旅は集落ごと1軒ずつ訪ね回り、時には食事を共にし、宿を借り、胸襟を開いて語り合う旅。そうして会った民は、すでに人口75万人の3割を越えたと聞く。
現場に根付くガバナンスは貧困解消にも欠かせないと、国王は政府の次世代リーダーらと旅を共にするのを重んじる。すでにその効果は、21世紀のニーズに沿う農地改革や公正かつ質の高い教育への改革などに表れ始めている。
…そして、最後に西水氏はこう結んでいる。「わが国の小選挙区は、ブータンより小さい。」
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