中公文庫の「戦争の世界史(下)」(W・H・マクニール著/本年1月発行)を読んでいる。文化祭準備でくたくたに疲れているのだが、なかなか面白いので、通勤時についつい読んでしまう。(変な表現だけど…。)今回の本は、珍しく下巻から読み始めている。と、いうのも本の帯に「訳者のあとがきより」として、「上下二巻ウン百ページの分量にためらっていらっしゃるのなら、まず下巻第七章の二つ目の節「新しい模範、プロイセン式の戦争」だけ読んでみてください。維新直後から昭和前期まで帝国陸海軍を呪縛しつづけた大先達の足跡が「統帥権」の起源を含めほんの30頁できれいにまとめられています。」と書かれていたからだ。およそ、その意味はわかった。近代陸海軍の参謀本部制度を意味しているのだろう、と。
もちろん、それ以外に面白いことがたくさん載っていた。意外な話としては、この頃の銃はほとんど先込式ライフルだった。つまり、銃弾を装填するのに立って行う必要があったのだ。プロイセンは、後込式のライフルを先駆的に使用した。と、いうことは、銃弾の装填のために立つ必要がない。様々な遮蔽物に隠れながら、立射、膝射、伏射、座射など様々な姿勢で撃つことができるわけだ。今ではあたりまえのことだが、プロイセンの兵は徴兵された素人兵がほとんどである。ビビッて弾をすぐ撃ちつくすのではないか、またそれまでの先込式で培われてきた戦術的な機動性(弾込めから一斉射撃に移る一連の流れ)が失われるのではないかと心配されたのだという。
対するフランスは、ナポレオン戦争以来の元気(エラン)と勇気こそが勝利の鍵で、プロイセンの制定した参謀のような知的な作業などいらないと信じる軍隊だった。しかもフランス軍は他のプロイセンを含めて一般に貴族が将校になっているのだが、フランス革命以後下士官からのたたき上げの将校が多く、さらに徴兵制ながら、他人に金を払い、代人を立てることで忌避することができた。代人としてうってつけだったのは古参兵だった。彼らベテラン軍人は金を得て長期勤務することになる。まさに、上も下も戦争のプロ集団だったのだ。
プロイセンは、参謀が知恵を絞る。下士官の代表を各部隊から選び、後込式ライフルの使用法と戦術をワークショップするのだ。それを各部隊で周知徹底させたのである。普仏戦争はまさに、知的な参謀の指揮する後込銃をもつ、訓練された素人軍団対フランスのプロ集団の戦いだったのだ。その結果は、日本陸軍がプロイセンを模範にしたことで、おのずと明らかである。
もちろん、普仏戦争に対するその他の視点がこれでもか、というくらい詳細に書かれている。こういう話、なかなか興味深い。教科書の行間を埋める重要な話の宝庫である。
2014年9月5日金曜日
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