2014年9月29日月曜日

日経「冷徹な頭脳より暖かい心」

故宇沢弘文東大名誉教授
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日経の朝刊に、先日亡くなった宇沢弘文東大名誉教授を偲んだ岩井克人国際基督教大学教授の論文が載っていた。タイトルは「冷徹な頭脳より暖かい心」である。「巨星落つ。」で始まるこの論文、正直、経済学の門外漢である私にはかなり難解な経済理論の話が出てきたのだが、一気に読ませてもらった。

岩井先生は、宇沢先生の門下生である故に、宇沢先生の人柄が偲ばれる論文だった。ロンドンに留学された際、貧民窟を指導教官と視察され、「経済学はこの人たちを救う使命がある」という思いを生涯持ち続けた話が印象に残る。

ところが、経済学と言うのは、極めて怜悧で数学的な学問である。先日も、生徒に教えたのだが、「経済人」という概念がある。経済学は、あくまで経済的合理性に基づく個人主義的な人間を基礎においている。宇沢先生はそもそも数学から経済学に移られた。極めて「クールな頭脳」を持っておられたわけだ。最初はアメリカで、数理経済学や新古典経済学の研究に従事される。しかし、常に、暖かい心を持つべきであるという葛藤に苛まれておられたのではないか、と岩井先生は分析されている。

大学紛争で、授業が出来ないとき、有志の学生や院生、若い研究者を集めて論じ、夜は飲みにいって、そういう心情を吐露されていたようだ。公害問題や環境問題に軸足を移されたのも、そういう反経済人的な「温かい心の経済学」の確立へと動かれたのであろう。極めて興味深い論文だった。

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